佐和

(応援)人はきっと、恋愛に於いてのみ他者を傷つけることが許されるのでしょう。傷つけた痛みを自分に置き換え人として成長していく。そしてまた恋愛とはこんなにも人を臆病にさせるものなのでしょうか。  「グレフル」と呼ばれているこの作品群のなかで最初に読ませていただいたのは「幾つもの夜 幾つもの朝」でした。麻倉 涼香が主人公のこちらの作品は「オーバーライト」の主人公上村 達哉との別れのシーンから物語は始まります。  そして「オーバーライト」の更新を追いかける傍らで三谷 香奈が主人公の「グレープフルーツを食べなさい」を読了しました。品のある落ち着いた文章がページを捲る指を最後まで止めさせてはくれませんでした。  惹かれあっているのに、抱えている事情のためうまく理解し合えない。踏み込みたい、踏み込ませたくない。そんな微妙に揺れ動くそれぞれの感情が絶妙なバランスを保ってこのシリーズは描かれている。読んでいてこちらまで苦しくなるくらいです。  この「オーバーライト」では、香奈目線の「グレフル」では明かされなかった達哉の心情がとても丁寧に描かれています。丁寧に描かれていることで、香奈や涼香の心情もまた真に迫ってくるほどに。ラストに近づいて達哉が男としてどんな心境で決断を下していったのか、描かれるのが本当に楽しみです。  そして実はこのシリーズにはもう一つ、素敵な短編があるのです。応援特典として添えられた「あたたかな手」。しとしとと地に優しく雨が染み込むようなこの物語が私は大好きです。この小さな物語小さな幸せこそが香奈と達哉、それぞれの親たちが望んだ未来なのでしょう。  シリーズを通して重要なモチーフとして描かれているグレープフルーツは時に甘さよりも苦さの方が際立ちます。恋愛も同じこと。甘いだけでは成り立たない。苦さも知ったからこそ、あの時の香奈は無条件に達哉を受け入れることができたのだと思います、何の見返りも求めずに。  イベントと並行しての執筆、本当にお疲れ様です。無事に完結されますように心から願ってます。  あともうひと息、執筆、頑張って下さいね。
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佐和さん、『オーバーライト』にレビューをくださりありがとうございます。 佐和さんが作品を読んでくださっているのは知っていましたが、まさかレビューまで書いていただけるとは思いもよらず……。 真夜中にふと目が覚めた時、佐和さんからのレビューに気が付いて、興奮のあまり目が冴えてしまいました(笑) 私は常々、等身大の人々が主役の、リアルな感情に近い作品を描きたいと思っていまして。 誰かを好きになり、求めるという行為は、決して綺麗なだけではない、色々な感情の側面を持つものだと思っています。 本編の『グレープフルーツを食べなさい』同様、いやそれ以上に上村側を描いたこの『オーバーライト』という作品
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