宮下 唯

【何度も君に恋をする】の続きです。 パチリ。 私と彼の視線が交差した。 恐らく今の私の顔には困惑と戸惑い、それから畏縮といった様々な感情が乗っていることだろう。 席の配置は男女向かい合わせではなく、それぞれ均一になるよう半々で分かれた。 私の隣に座ったのは、大分遊び慣れているオーラ丸出しの見るからに軽薄そうな男だったが、彼……人見くんよりはよっぽどマシ。 ……でもなかったみたい。 なんと彼は私の正面に座った。 一通りの自己紹介が終えた後、なるべく意識を前方に向けないように私はいつになく隣のチャラ男にたくさん話し掛けた。 と言っても、女の子達の狙いは全員人見くんなので、彼が特別私に絡んでくることはなく、寧ろ私の方が自意識過剰みたいで恥ずかしい。 だって、三回リセットして行き着く末路が同じだったのだから、普通は警戒ぐらいするでしょ。 無駄にテンションの高いチャラ男の相手をするのは骨が折れ、一旦息抜きがてら外の空気を吸ってこようと「ごめん、ちょっとトイレ」と言って席を離れた。 カラオケ館の真横に建っているコンビニの前で適当に時間を潰す。 あまり遅くなると周りが不審がるかもしれないからそろそろ戻ろうかと踵を変えそうとしたら……。 「きゃっ」 人見くんを目と鼻の先で捉えた。 思わず心の声がそのまま表に出てしまい、慌てて口元をおさえるが時既に遅し。 彼は目尻を下げて、ふっと笑った。 「きゃって酷いなぁ。そんな態度女子に取られたの初めてなんだけど?」 「え、あはは……ごめんあれはそういう意味じゃなくて、まさか人見くんがこの場にいると思わなくてさ、」 「あ、名前覚えててくれたんだ。俺のこと興味ないかと思った」 「いやぁ、あれだけ皆が人見くん人見くんって言ってたらねぇ?」 「……ふーん?」 「…………」 「…………」 き、気まずい……。 彼が何故ここにいるのかは不明だが、これ以上彼との会話を続けていたくなかったので私は笑みを浮かべて「あ、私そろそろ戻るね」とそそくさと彼の横を通り過ぎようとした。 そしたら、待って、と後ろから声を掛けられた。 「連絡先交換しよ」 →
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驚いて声も出ない私に、彼は言葉を続ける。 「誤解しないで欲しいんだけど、他の子とはさっき交換済ませたから、君にだけ聞かないのはかえってマナー違反でしょ?」 「……べ、別に人見くんみたいないかにもモテそうな男の人が私のことそういう目で見てるとは思ってないけど……」 「ならいいじゃん。減るもんでもないし。合わないと感じたら拒否でもなんでもすればいい」 段々と断る道を閉ざされた私は、渋々携帯を取り出して、彼の顔を見つめた。 二重だけどスッと切れ長の綺麗な瞳が優しそうな笑みを滲ませている。 この世界線の人見くんはなんだか今までで一番まともそうに見える。 確かに彼の言
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続きがあるなんて、全然気づかなかったのでものすごくうれしいです!!!

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