あゆはし

花になぞらえた美しい文脈からは醜い人の愛欲がこれでもかと溢れ出ている まず目を引かれる文章。美しく聡明な情景を描写する圧巻の表現力。この作品の主体である花をモチーフにした華やかで美しい雰囲気は、まさにその文章から生み出されるものだ。 無駄のない美しさの中だからこそ、余計に人の泥臭さが目に付く。人が欲なしでは生きられないことをまざまざと見せつけられる。誰しも抱える自分勝手な欲が、絡み合う相関図のベクトルをより複雑なものにしている気がする。 出逢った瞬間から動き出し、そして狂いだした歯車に、じわじわと引き込まれ、あっという間に美しい愛欲の世界にどっぷり浸かってしまった。 見目麗しい花店店長東郷の周りで起こる事件。 疑わしい人物は、複数名。 繰り返し読んでも、その疑惑は深くなるばかり。 一体誰が殺したのか。そして表題の“共犯者”とは。 最後まで目の離せない展開に、もどかしい疼きをまんまと誘い出す作者様の文才に脱帽です。 これは一読の価値有り。
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