清水 誉

とても興味深く、面白い作品でした。 主人公の目線で綴られていて、タイトルの女性「ひさ」は形容こそ描かれていますが、彼女の心情はあまり描かれてはいません。 それ故、読み手の心次第で、ひさはどんな女にもなりうると思いました。 左側のみ残された痕。それを醜く哀れだと思う主人に、ひさは本当にはじめから心を寄せたのか。 視力と嗅覚が衰えた主人に、旦那様、と呼びかけるその声ははたして本当に純粋な誘惑だったのか。 ……もし自分がひさならば。 自身を醜いと憐れむ主人の気持ちはとうに知っていた。そう思われるのは悲しいが、優しくしてくれる主人は尊敬できるお方だ。 そんな主人が大病になり、目も鼻もきかなくなり。 周りの人々が次々と去っていく。 ポツンと残された主人を見て、ひさはこう思わなかっただろうか? ーーーーあゝ憐れだ、と。 憐れみの中に隠した侮蔑が、ひさに「旦那様」と甘く囁かせたように思いました。 愛情も、勿論あったでしょう。 もうひさの体など見えない筈なのに、それでも受け入れられずに満たされぬ想いは、我が身を喰わせる行為となり。 目の前で自分の肉を咀嚼する主人に囁く「旦那様」は、静かながらも激情を感じました。 腹から聞こえるひさの声は、これからまだ生きねばならない彼に囁く。 ここで終わった物語は、見事にひやりとした恐怖を置いていった。 ただの愛憎劇ではない深い作品で、とても面白かったです。ありがとうございました。
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おはようございます(^ ^) 素敵なレビューをありがとうございます(*^ ^*) いただいたレビューを拝見し、とても丁寧にお読みいただけたことを感じました。また、綴られていたひさの心情には唸る思いでした。 ここだけの話、清水さんが読み取って下さったひさの心情は、私が考えていたものにかなり近かったです。勿論、書き終えて、読者さまに物語を委ねた段階で、物語に何を感じても、それは読者さまの自由であり、書き手である私が関知するものではないのですが、こう読み取っていただくと、やはり唸らざるを得ず、――もう一度言わせていただきます。レビューをありがとうございました。 …後でお知りになるとややこしい
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とても良い作品でした。 「はらのなか」読みたいですが……だめなの?(´・Д・)」 気になるなぁ。 はらのなかの存在は、彼を苦しめるのでしょうね。 もし自分ならば、きっと口にするもの全てが怖くなるかもしれないほどの恐怖でしょう。
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