桜というのはなぜこうも美しいのか。 賑やかで華やかな一面ももちろんだが、日本人ならばどこか物哀しい寂しさにこそ心震えるのではないだろうか。 桜の大樹を中心に語られた本作品。 作者さまの既存作品の中でもとびきりキュートな登場人物、樹木医ククノの物語だ。 ククノのおっとり柔らかい人柄と、老女の垢抜けた美しさが実にうまくマッチしていた。まさに樹齢を重ねた桜樹の精霊と話しているような風情。 語られるのは殺伐とした告白ながら、真相はきっと穢れた物ではないだろうと容易に推測できる。それまでのキャラクターの描写がそれを信じさせてくれる。 謎解きはあるものの、種明かしなどと言ってくれるな。 これはククノが出会った、在りし日の想い。そしてその想いが桜樹に宿る刻を見送る物語である。
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満月 兎の助さん、美事なレビューありがとうございます。 ぜんぜんククノらしくない物語でしたね。 主役は老女なので仕方ないですが、扱ったテーマが重かった。 でも読み解いてくれて、作者冥利に尽きます(ΦωΦ)

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