まず初めに、ごく色相を絞ったカラーや繊細なラインで描写された素敵な表紙絵と、冒頭の雨で閉ざされた駅舎の仄暗い雰囲気がマッチして、読み手である私たちはあっという間にそのシーンの中に我が身を引き込まれます。 クロムとベニという存在は、イラストの幻想的なタッチからの印象もあって、登場した時には、全くの異世界から来たファンタジーなキャラクターだと思っていました。でも実は、元々ヒロインとあんな縁で繋がっていたなんて…本当に驚きました!しかももう一度読み直したら、かなり最初の方からその伏線が張られてるじゃ有りませんか。私、最初から結構伏線がないかとアンテナ張りながら読むやつなんですが(嫌なやつ←)、微塵も気付きませんでしたよ! 特に、時々入る回想の使い方なんかで完全に騙されておりました。私たちは最初からミスリードされていたんですね…。 途中、クロムが何度説明しても、ヒロインが「フィ、フィナンシェ…」と噛みながら言ってしまうところなんかは、ベタながらもクスリと笑ってしまいました。その一方、コミカルなシーンでも惹きつけておきながら、最後は感動の涙(しかもあんな形での!)で終わらせるあたり、やはり久木さんの筆力の高さを感じさせます。 個人的には、ベニが可愛くて仕方ありません。かなりのツボです。 描写されているビジュアルが非常に魅力的なのも理由の一つですが、私は特にその話し方が可愛くて好きです。 最初は本作の気軽なマスコットキャラクター的な役割かなと思ったんですが、実は(作中ではハッキリそうとは書かれていないものの)作品全体のテーマを象徴する深い存在なのかな、と読み終わった後に感じてしまうのは、私の深読みのしすぎでしょうか。 それにしても、「銀河祭」、私たちの慣れ親しんでいるあの風習にどこか似ていますよね。ひょっとしたら、はるか昔にこうしてこの祭りを経験した人間が、その後現実世界で真似したことが始まりなのかもしれないな…と考えずにはいられません。 (★)
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