読み終えた直後、いわゆる読後感の良さに感服してしまった。 桜はもう散ってしまったし、花粉症持ちの花見はその時は良くても、あとから軍服姿の拷問官が鞭を片手に酷薄な笑みを浮かべてやって来たりする。 だから、もっぱらイマジネーションに頼っての花見になるのだが、桜の花の美しくもはかない散り様と、おたがいのほんのわずかな心の距離の短縮、そこへいたるまでの丁寧な描写は、読むものを優しい気持ちで充たしてくれる。 「僕」にとっても「母親」にとってもベストな終わり方だ。ああ良かったーー単純にそう思った。 だがしかし。 読後しばらく経つと、少し違う感想がもたげてきた。 もしかして、著者にミスリードをしかけられた? というような…… この作品の一層目だけを読むなら、上記のような感想でも決して間違いではないだろう。 ところがその下、二層目のレイヤーには(二層目といっても隠しレイヤーではない)、「選択」を示唆する冷徹な「僕」の姿が、ひとつの“美しい終焉”がある。 許すとか許されたいとかいう気持ちを超えてしまったものは、最後の章タイトルにある通り「解放」以外、なす術がないのかもしれない。 幼い頃に離別した親と再会してーーというお話自体は珍しくはないのだが、心の深いところをグググググーッと抉られる。 短編にしてひらりひらり舞い踊るも、重厚な作品。
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ことりはねさん(*゚▽゚*) 素敵なレビューをいただき恐縮です( ;∀;)!! まさかこんなに素晴らしいレビューを頂けるなんて予想もつかなかったので、凄く嬉しいです。まだまだ拙い作品ですが、何かが心に染みて貰えたのなら、本当に書いて良かったです。 ありがとうございました。頂いたレビュー大切にします。
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ムラタ マユミさん、こんばんは。 NMK(日本妄想協会)所属、レビューにも妄想解釈標準装備のことりはねです(*^▽^*) そんななんで、外してたらどうしようとドキドキしてました。 喜んでいただけて嬉しいです。 こちらこそ素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございます! 遅読ですが、全作品読破を目指しています! 楽しみです^^
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