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そんなの、ひとりで抱えんなよ
朋藤チルヲ@ノアール再公開中
2018/10/11 21:06
「そんなの、ひとりで抱えんなよ」 ぶっきらぼうで、簡素で、しかしこれほど温もりのある言葉を、わたしは知らない。 いや、きっとどこかでは見たことがある。 それは、青春時代に読んだマンガの中だったのかもしれないし、ある程度大人になってから手を出し始めた恋愛小説の中だったのかもしれない。 そう考えると、わりとあちこちに溢れた言葉だ。 その大量生産されたようなワンフレーズが、この心にこんなにも突き刺さり、心を揺さぶり、ジンと鼻っぱしらを熱くさせたのはなぜなのか。 創作物の中ではありふれた言葉でも、現実の世界でそれをかけてもらえる当人になることは難しい。 この物語の凄いところは、巧みな心理描写で気づかないうちに読者をその物語の世界の中に引きずり込んでしまうところだ。 あの一言がわたしの胸を貫いたということは、自身がいつのまにか登場人物である「優しく悲しい嘘をつく」女子に感情移入していたということだろう。そして、関わった人間たちの優しさを、温もりを、この肌で直に感じたからに他ならない。 姉弟が声を上げて泣くシーンでは、自分も嗚咽を漏らしてしまいそうになってしまった。 優しさは強さだ。この物語は、優しく、そしてまっすぐな強さに溢れている。 「そんなの、ひとりで抱えんなよ」 すぐそばにいる大切な誰かに、そう言ってあげられる人間になりたい。 この物語を読み終えたとき、おそらく誰もがそんなふうに思い、大切な誰かに会いたくなることだろう。
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