しのき美緒

☆家族になろうよ。若者は恋人のすべてを受け入れる決意をする☆ 着眼点はよいのに構成が悪いために共感が中途半端で感動が薄くなってしまった。良作になる匂いがぷんぷんしているのに残念! 理由は 1 主人公不在 時夫と正、時夫と誠(祖父)、時夫と美優紀、のエピソードが散りばめられているが、掘り下げられていないために読み手は誰に共感すればいいのかわからない。 2ページからラストのページへのつなげ方が悪く、大人ふたりが子供(正)を騙しているように読めてしまう。 2ページ、 「僕な、もうすぐとーちゃんじゃなくなるんだ……」 「うん……」 11ページ 「時夫さんね、もうすぐとーちゃんじゃなくなるの」  真剣な眼差しで美優紀はそう告げる。正は唇を噛み締める。そんな正に向かい、時夫は笑いかけた。 2ページで時夫はその理由を正に明かしていない。正は不安に突き落とされたままである。 この場合は、「さ、昼飯を食いにいくか。お母さんが手を振ってる」くらいにとどめておき、 普段と違う時夫の様子から「勝手に」正が悪いほうへ想像を膨らませていって、ラストにつなげるほうが読者は作品世界に入りやすいのではなかろうか。 2、テーマの絞り込み不足 著者が描きたかったテーマは 非常に若くして父親になる決意をした時夫 父親ができることになった正の喜び どちらだろう。1と関連するが主人公を定めることで、読者を物語に引き込むことができる。 3、あまりに衒学的 枕草子第72段は一般常識だろうか→仕込み不足。誠の社会的地位、職業など履歴をつけよう。伏線として例えば「高校の古文の先生だった」「大学で日本文学の教授である」が必要だった。 時夫がそれをすいすいと理解するのも唐突な感じがした。字数に余力があれば、祖父の経歴とともに時夫の経歴や美優紀との接点も軽く書いておいたほうがよかったと思う。 正の大学で、美優紀は図書館司書をしているとか。 妄想コンテストでいえば、「男同士、女同士」では厳しかった(テーマとの関連性が弱かった)。むしろ「ぬくもり」とか「新しい○○」(でも、ど直球すぎて、こっちはダメかも)のほうがいいと思う。 書き直して新規作品として再トライしてみてはいかがでしょう。 綾さんとしのきの合同レビュー企画へのご参加、まことにありがとうございました。 しのき美緒
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