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流鬼
Satori
2019/2/19 20:23
オカルトや伝奇小説のようですが、そちらが副次的で、人間の生々しい感情を描いている作品。不思議と、誰かに偏って移入しなかったのですが、最後まで読んでその理由にも納得。高い筆力に支えられた文学小説です。 もしその土地に流鬼の伝説がなかったら。また、彼らが何者かという属性ではなく、小菊や秋人個々に向き合う人間がいたなら。そう思わずにはいられない。 和貴が秋人にとってその存在だったのに、知らされていく事実の強烈さに本質が見えなくなっていくという展開が切ない。 声を大にすることで、無知な人たちを巻き込んでしまえる怖さ。 村の閉塞性はある意味、主観だらけのニュースに埋め尽くされた現代社会の風刺のようにも思えるからこそ、そんな場所に飛び込んできた飛田にはつい、物質的な救済だけではなく、外をよく知る人ならではの目線での、心の救済をしてほしかったと望んでしまった。 (実際に自分がその状況に置かれて何ができるのかと考えれば、仕方のないことであり、ある意味それはリアリティでもあるけれど) 絶望の中に残された『種』を希望と見るか、悪夢の続きと見るかは読み手によって差が出そうですが、悲壮感はなかった。それはきっと、自分がどうすべきかを悟って最後まで自分を貫いた秋人のおかげかな。 しかし、これが序章だとは……(笑)まさかそこに繋がるのか! という驚きの一行を見てしまい、彼らのその後がとても気になりました。
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佐崎らいむ
2019/2/20 0:12
さとりさん~、ありがとうございます! 書いている間も、書き終えてからも、この物語はいったい何だろうと常に悩んでいたんだけど、さとりさんの、このレビューを読んで、すとんと腑に落ちた感じがしました(しっかりしろ作者) いろんな想いを込めはしたけど、何か道徳的なまとめで終わらせるのも違う気がして。この物語は、ひとつのある出来事を俯瞰で眺める形の、あるいみドキュメンタリーのような形にしたかったんです。 さとりさんの、>もしその土地に流鬼の伝説がなかったら という言葉にハッとしました。私が描きたかったテーマのひとつはそれだなって。人はあらかじめ固められた属性を、どうしても切り離すことが出来ない生き物で
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