直田 麻矢子

一杯、人、酒を飲み、二杯、酒、酒を飲み、三杯、酒、人を飲む
この作品は、わたしが好きな作風で、作者さまが紡がれる作品は、わたしはどれも好みなのですが、この作品に関しては、ひときわ心が震えました。ですから、主観的な感想になりますことを先に述べさせていただきます。 ごく普通の日常が、アルコールというこれもまた気軽に購入できる、身近な存在によって、こうも人間の生きざまが変わってしまう。 主人公は決して望んでいたわけではないのに、またその都度アルコールの恐さを知りつつ悔いたり、拒絶したり、おびえながらも、生きているのに。 しかし、この主人公は根が明るく、それがバブル崩壊や、学生生活、結果的に惰性に見えてしまうけれども、そうではなくて、そこもきちんと思い悩み、不安を抱え、後悔する。きちんと書かれているからこそ、短絡的な逃避ではく、一つ一つの事象を丁寧に掬いとって、これは作者さまにしてみれば、創作作業が本当に大変だったろうと思います。 酒は百薬の長とも言います。一方で、酒、人を飲むとも言います。ひとたび量がかさむと、信念がかすみやすくなる。心情によって、左右されてしまう。それは、単に弱さという言葉だけではあらわせないです。 社会人となり、プロポーズ、子どもの誕生、節目節目にあったアルコールの存在感。目を背けることなく、平静を保ちたかった胸のうち。 刻一刻と変わっていく環境、それに対する焦燥感。 人は自らの意志で人生を選ぶことができるのでしょうか。そのとき、そのときの最適な人生の選択を、将来に何が起こるか予見できて、選びとることは可能なのでしょうか。 第45章フランスに書かれている、人の記憶に残るような生き方をすることに決めた。 懸命に生きていた、また生きている主人公の偽りない証しが次々にあらわれていて、一言ではすまされない、壮大な物語を読ませていただきました。 素敵な作品をありがとうございます。ご活躍をお祈りしています。
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どうも御無沙汰しています。このたびは「アル中放浪記」を読んでいただき 素敵なレビューまで、ありがとうございます。何度も読み返しています笑。 若くしてアルコールの醍醐味を知ってしまった主人公の半生でしたが、実によく深読みされていて感謝、感激です。アルコールの力で頑張ってきた自分に降りかかる災厄。今日は辞めようと思っても次の日には飲んでいること、 これはもう完全に病気です。そのうち人生の節目節目にはなくてはならないものになっていき廃人と化していく怖さを描いてみました。 人は自らの意志で人生を選ぶことができるのか、という疑問でしたがアルコール依存者にはすべて無力になることが伝わればいいと思っています
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