森本

「いいえ、あなたはいつもご立派でした」
三読目です。読むたびに背筋が伸びる心地がして、心の中に涼しい風が通り抜けていきます。 まず目を瞠るのが人物/風景描写の濃やかさです。精緻な工芸品のようです。これほど絵画的に美を紙面に映すことができる書き手さんは稀有だと思いました。 描写のみならず内容にも優れた見識が見受けられます。その一つは、初子が健吾の生きてきた決して平坦ではない道のりを肯定する場面です。 「いいえ、あなたはいつもご立派でした」 ふしぎなことに私はこの場面に反戦を感じました。過去を認める。現在を肯定する。過ちを未来に持ち越さず、繰り返さない。 初子の凛とした佇まいから、誰しもが健やかさと自尊心をもって平和を生きる権利があることが伝わってきます。 重いテーマに対して及び腰にも教条的にもならず、美と優しさを織り込んで描ききった作者様の技量に頭が下がりました。 美と誠実な姿勢をもって、私達が生きる混迷した情勢に一石を投じてくださり、ありがとうございましたm(__)m。Webには貴重な書き手さんだと思います。 このような作品が発表され、Webに上げられ、自由に読む権利をかろうじて保っている世の中にも感謝します。
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森本様 過分なレビューをありがとうございました。 小さな反戦作品なので、重苦しくなく、戦争で運命を捻じ曲げられたふたりのお伽噺になるようにまとめました。 初子はどれほど生きたかったでしょう。日本には多くの初子がいたと思うのです。 森本様はじめ心ある皆様の目に止まって、皆様の心になにかを残せたら、作者としてこの上なく幸せです。 お読みくださってありがとうございます。 しのき
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しのき様 「初子はどれだけ生きたかったでしょう」 物語の核はそこに尽きるかもしれませんね。初子自身は生き延びることができなかったからこそ、健吾にあの言葉を言うことができたのでしょう。 かつて日本中にいた初子のためにも、私達自身のためにも、決して惨禍を繰り返してはならないと思います。 この作品を書いてくださってありがとうございましたm(__)m。 森本
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