有栖川 露陰

戦前においては、 「マツタケよりもシイタケのほうが高価」 個人的には歴史観がひっくり返るほどの衝撃の事実です。 里山が燃料などの資源の供給源だったので過剰に利用されて土壌が荒れていたからアカマツがいっぱいで、結果マツタケがいっぱいとれたということらしいですね。 戦前の食事風景を書くうえでは、上流階級の宴席やエリート家庭(上層中産階級)の御馳走を描くより、 庶民の日常の家庭料理を描くほうが遥かに難しいと感じます。 上流階級の祝宴のメニューや、憧れのリッチなメニュー、逆に凶作に見舞われた農村の食事は「特別」或いは「非日常」であるが故に記録に残りますが 「普通」の食事は記録する必要がないので資料を探すにも困ります。 それに、「日常」をわざわざ記録して本に残せるような人たちは社会的地位のある文豪とかエリート家庭の人達なので、ごく限られたセレブの「日常」いわば大衆にとっての「憧れのモデルケース」みたいなものだったりする訳です。 戦前の普通の「サラリーマン」の暮らしは本になったりしてますが、この「サラリーマン」とは今で言えば名門大卒の超高学歴、財閥系大企業本社勤務で出世間違いなし、実家も太い花形エリートコースのイケリーマン(あーっはっはっはっはあーっ!キャリヤイサムどえす!と言わんばかりの)ですし。 いわゆる港区女子というカテゴリーの人々のインスタを飾る「日常」が大多数の日本人女性の「日常」とは違うようなものです。 うっかり庶民の常食にシイタケいっぱいのお煮しめとか書いたら間違いだった訳です。 半世紀以上も昔の社会は、既に異世界の感があります。
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同様に、第二次大戦後までチキンは高価だった、というのもびっくりです。 ナポレオンお気に入りの質素なチキンのトマト煮「マレンゴ風」って実は当時としてはかなり贅沢な料理だったのか? とか、役目を終えた廃鶏を使うから臭み消しにトマトで煮込まざるを得なかったのか? とか様々な疑問が湧いてもきます。

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