なぎの みや

心と体、それぞれの成長
プロローグ的な作品となる『海への誓い』を経ての物語ですね。前作とは時代もほぼ同じ、世界観も全く同じはずなのですが……作品の色合いはかなり違って見えました。 それは後述するとして、まずは各キャラクターに感じた事を述べさせていただきます。 まずは今回の主人公のラルクくん。万能どころか少し頼りなく、負けん気が強くて自分の力の程度を分かっていない。それでも父親譲りの信念の強さと母親から贈られた『海の恵み(敢えてこう書きます)』を武器に、幾多の困難に立ち向かいます。そのギリギリ感は本当にハラハラさせられました。 次に某やんごとなき生まれのレリサ。彼女は様々な顔を持ち合わせていますね。故郷を守る使命感に満ちた心、王族としての気高さ、そして時折見せる少女の弱さ。彼女のこうした複雑な心境が、ラルクくんと並んでとてもバランスが取れています。その内彼が成長する姿によって――ですね。 そして、宿敵として最後まで彼らの前に立ちはだかるアウレス。とにかく優秀を絵に描いた様な人物で、正に千里眼の持ち主と言っても過言ではないでしょう。彼をいい人、という声も見えますが、個人的には何とも言えません。彼としては最善を尽くしたのかもしれませんが、作品全体を見た結果だと、まだまだ血を流さなくて済む方法はあったのではないか、とも思います。そこはやはり軍人としての忠誠心も働いていたのかな……とも。 そして前作の主人公であり、本作主人公であるラルクの育ての親のギムリ。冒頭よりの登場ですが、彼の心の変化によって物語は全く表情を変えてしまっています。前回は、海の男たちの人生を主に描いた物語でしたね。自分が生き残る事を第一とし、自分の利益を最優先とする。前作はそういう薄汚く(褒め言葉)も生命力溢れた海賊たちのお話でした。しかし今回は違う。ギムリが何を大切にするか、この10年の心の成長が見られます。そしてそれは『息子』であるラルクにもしっかりと受け継がれていて―― 他にも魅力的なキャラクターは沢山いますが、語るには少し文字が足りませんね。個人的には今後の、好戦的であると語られたニューシタルハの行動が気になるところでしたが、それも次回作で描かれるのでしょうか。楽しみです。 何はともあれ、大変楽しませて頂きました。ありがとうございました(^-^)
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