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降りしきる雨に失くした傘を思う。
小池正浩
2020/10/18 0:33
それは雨の日のことだった
……雨、降りそそぐ雨、 アスファルトの上、音符が散らばった…… ……夢、眼の前は滲んで、 たった一歩さえ、踏み出せないまま…… ──うつむけば 水溜まりに映る ぼやけた自分を見た 「いま何を、やりたいの?」 「……分からない」 あの日から 私たちは 〝大切なもの〟をなくした あきらめることで大人になるのが 怖くてくやしいから…… ……雨、街中びしょ濡れ、 流れる人の群れ、色とりどりの傘…… ……夢、いつかの思い出、 誰かの面影、通り過ぎた跡が…… ──ありふれた 日常の憂鬱、不安、やりきれなさ 行くあても 居る場所も ……何もない あの日から 私たちは 〝大切なモノ〟をなくした 「傷つけることで大人になるのか?」 必死で叫んでいた…… 「何をしたらいいんだろう?」 どんより曇る空のもと 「どこへ行けばいいんだろう?」 たとえ道に迷っても 生きる意味はきっとある だからまた 私たちは 〝大切なモノ〟をさがした ここにいることが絆になるから 明日へつながる 「いつの日か、強くなる。 もう泣かないで大丈夫」 ……雨、夜空の彼方へ、 悲しみの果て、夕焼けキラキラ…… ……夢、未来に向かって、 ほんの少しだけ、前進しながら…… 「大丈夫」 ──そんな言葉が胸にそっと沁みこんでくるような、ひとつのちいさな物語。無数に「降りしきる雨」の景色と音色といっしょになって。 あなたの「傘」は何ですか?
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