昭島瑛子

魅力的な小説は着想から
リコさんの『君といた夏』は名作だと以前から聞いていましたが未読でしたm(_ _)m 今回改訂版が公開されたのを機に拝読いたしました。 魅力的な小説を書くためには「冒頭から読者を惹き付けて」とか「次々にページをめくらせる工夫を」などと言われますが、本作を読んで「その小説が魅力的になるかどうかは着想の時点で決まっているんだろうな」と思いました。 七日後には成仏してしまうイケメン幽霊。 しかもイケメン幽霊は記憶を失くしている。 こんな設定を思いついた時点で、もう小説が面白くなることは決まっているでしょう。 イケメン幽霊は何者なのか知りたい一心で読者はページをめくってしまいます。 主人公の結夏ちゃんがお寺の子だという設定も「幽霊と会話できてしまう」という特殊な状況に説得力を持たせています。しかもお寺の子なのでさまざまなお寺の住職たちが力になってくれるのも素敵です。 設定だけでも秀逸なのですが、リコさんの丁寧な描写が物語にさらなる魅力を上乗せしています。 私は関西には数えるほどしか行ったことがないのですが、そんな私のわずかな記憶を呼び覚ますほどリコさんの「大阪の暑い夏」の描写は素晴らしいです。 関東とは質の違う暑さを肌で思い出させてくれます。 そして「七日後には成仏してしまう」という設定から切ないラストが予想されるのですが、そこには「さすが読者を裏切らないリコさん!」と言いたくなる爽やかなラストが待っていました。 隅から隅までたくさんの魅力が詰まった作品でした。
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