岡田朔

完結おめでとうございます
改定前のものと改訂後の本作、どちらも読ませていただきました。 改訂前のものは、非日常のラブストーリーというイメージが強く、ふたりの関係の甘さや、時くんの志穂さんを想う気持ちの一途さがとても好きでした。作品全体を上品なベールが被っていたようにも感じていました。 改訂版は、志穂さんの抱えていた問題がより深く掘り下げられ、スベスベな手触りの恋のベールをめくった後に出てくる、目を逸らしたくなるような中身をしっかりと見せてくれます。 そこには人を愛することの本当の意味での難しさが描かれていたように私は思いました。 生きることは死に向かうこと。みんな老いて美しさを失い、いつか病におかされ最期の時を迎えます。 結婚する時の誓う言葉「病める時も健やかなる時も愛することを誓いますか?」――この誓いを本当の意味でまっとうすることができる男女がどのくらいいるのでしょうか。 少なくとも気持ちが揺らぐのはたしかで、あとは自制心や自分は冷たい人間ではないと思いたいがゆえに恋人としての愛を家族としての愛に変え、いい妻、いい夫を演じていくのではないかと私は思います。(もしかすると、永遠に愛していましたという方もいらっしゃるかもしれないので、私はそういう小説もあって欲しいと思いますが) 死臭を放ち出した愛する人に、キスができなくなってしまった志穂さん。 病におかされ、乱暴に妻に自分の生きた印を刻もうとする旦那さん。 志穂さんの体の一部(以前生物の教師から、人の体から落ちたものは、死を感じるから気持ち悪く思うのだときいてなるほどと思いました)を袋に入れて冷蔵庫に閉じ込める時くん。 とてもリアルだなと思いました。 人を愛することって綺麗事ではない。それを知った上で志穂さんと生きることを選んだ時くん、老いに怯えながらも時くんの気持ちを受け入れる志穂さん。指輪を外すラストシーンは、時くんと志穂さんの気持ちが伝わってきて、とても印象的でした。 単純にラブストーリーとして好きの度合いで言えば、改定前のものが好きです。 作品として質が高いのは改訂版だと思います。ラブストーリーというよりも、ヒューマンドラマに近く、読者にたくさん考えさせてくれる話です。そしてSassyさんらしさが強く出ている気がします。 素敵なお話をありがとうございました。
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朔さん 心のこもったレビューをありがとうございます。 嬉しくて何度も読み返してしまいました。 素敵な作品を書く方はレビューも素敵なんだと…… ひとことひとこと味わうように、読ませていただきました。 改稿前の作品がわたしのエブリスタでの初めての連載作でした。 道徳的でない、普通とはいえない関係をロマンチックに書き切ってみたいと思っていました。 自分なりに思い入れがありました。 書いて一年近く経ったあとで、もっと、生きることの残酷さや愚かさを掘り下げてみたいと思いました。 朔さんが拙作から読み取って、レビューに書いてくださった部分。 わたし以上にわたしが書きたかったことに迫ってくださっている
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Sassyさん、丁寧な返信をありがとうございました。 ちょっと子供がワクチン接種後に熱を出していて、お返事遅くなりました。 私あまりレビューが上手くないので、あまりこれから読む方の参考になるようなレビューじゃなくてごめんなさい。 でもSassyさんが喜んでくれて嬉しいです。 時くん旧→新で成長したということですね。これからはしっかり志穂さんを支えていってくれる男の人になっていくんじゃないかなと思います。 時くんに会えなくなるのは寂しいですね。
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