蘇芳

赤々と熱く、どす黒く燃え焦げる情念の火よ
最初の数行で物語の中へと引き込む、無駄なく鋭い描写はいつもながら見事です。 得体の知れない只中に放り込まれた語り手の、恐怖と苦痛に満ちた視点。 全てを奪われた怒りや嘆きを語り手にぶつける怒りや悲しみ憎しみ、それらを通り越した先にある絶望。 ほんの数ページで視界が鮮やかに塗り替えられるかのようでした。 囚われの身となった男と、その彼に憎しみをぶつける女たち。 読み進めるうち、どちらに対しても共感あるいは同情に似た感情移入せざるを得ませんでした。 どす黒く燃えるようだった苛烈さが、時間の経過とともに薄れ、かつての静謐さを少しずつ取り戻してゆく様子に、ホッとすると同時に、燃え尽きて灰ばかりになった炭の火を見るような寂しさを覚えたものです。 時に激しく燃え、また時には熱を失い移ろいゆく人間の心、色合いをつぶさに描き出す筆致は本当に素晴らしく、目を奪われるばかりでした。 彼らの行く先に思いを馳せずにはいられません。 灰ばかりになった炭火が、風に煽られて赤々と燃えるように、終わったはずの憎しみが再燃することもあるはずです。 許すと宣言しても尚、胸中で燃える憎しみは完全に消えはしないでしょう。 それでも尚、彼らがともに、人として再生の道を歩んで行くことを願うばかりです。 素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました。 今後も引き続き、応援させていただきます。
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蘇芳さま このたびはお読み下さいまして本当にありがとうございます。 そのうえ、こんなに真摯なご感想を頂けましたこと、感謝に堪えません。 今作は、最近、第二次世界大戦の東欧における、とあるホロコースト小説を読んだことが契機になっています。なので、ドラマチックなファンタジー世界のものがたりではありますが、わたしの中では、突飛で現実離れした物語を書いたつもりは全くなく、むしろ、人間の歴史においてこういった事例は「あるある」なのでは、と考えながら綴りました。 同時に移ろいゆく歴史のなかで揺れ動く、人間の激情を描き出したかったのですが、蘇芳さまの「炭火」の喩えが、まさにそれです。その喩えを目にした
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