大鈴野山

1ページ1ページを大切に何度も読みたくなる作品
作者様の作り込まれた物語に登場する人たちの心情と仕草、言葉のひとつひとつが見過ごせない、一文一文を大切に読みたくなる作品でした。 この物語の中心となる霞月。 物語の序盤、素っ気なく、ころころと気分が変わる霞月に圭介、拓真とともに私自身も振り回されながらも、どこかミステリアスで何か大きなものを抱えているような霞月に、読み始めてすぐに引き込まれてしまいました。 chapter1、2では霞月の一見、気分屋のようにも見える行動や言葉に戸惑いながら、彼女はいったい何者なんだろうという好奇心にも似た感情にページをめくる手が止まらなくなりました。圭介と拓真が、どこか苦しげな霞月に寄り添えればなぁと願いながらも読み進めてました。だからこそ、霞月が心を開き始めた様子が見られると、心を揺さぶられ、彼らと一緒に私自身も嬉しくなってしまいました。 そんな中、突然登場したのが惺。ある意味で、格の違いを見せつける彼に、正直そのときは「なんなんだ彼は!」と思ってしまいました笑 しかし、chapter3を読んで惺への印象は180°変わることとなりました。自分自身の霞月への想いを自覚しつつ、霞月のことを何よりも思い、時に自分の感情を抑えて彼女に寄り添う様子には心を打たれました。博学で理論的な惺が霞月にかける言葉は、様々なことを経験してきた彼だからこそ出る言葉であって、私の心にも残る言葉が沢山ありました。 そしてそんな惺に打ち明けられる霞月の過去。 いままで気まぐれのように見えた霞月の様子や、時折見せる重苦しい影は全てここに繋がっていたんですね。打ち明けたことにより、苦しみながらも少しずつ進もうとする霞月。そんな彼女に寄り添う惺。このふたりの姿に思わず涙が流れてしまいました。 作者様の全体的な物語の構成力と、繊細で美しい描写が浮かぶ文章力に脱帽です。ここまで小説に引き込まれたの本当に久しぶりでした。読み終わった後、もう一度最初から読み直したくなる作品です。いや、読み直し必須です。 素敵な作品、作者様に出会えたことに心から感謝いたします。
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大鈴様 素敵なレビューをありがとうございます。 また読み直すとまで言っていただけて感激でいっぱいです。 確かどこかでも似たようなことをつぶやきましたが、一章ごとに語り手を変えて、同じ景色でも違う情景に見えるようなストーリーが書いて見たいな、と思いこの構成にしようと決めました。 思ったよりも話が長くなってしまい、伏線が伏線の役割を果たさなかったりして反省する点も多々ありますが、大鈴さんに印象が180度変わったと言っていただけたので、成功だったかなと思います。 お忙しい中ページを捲って頂いていただけでなく、作品内に残して頂いたたくさんのコメント、いつも読むのが楽しみでした。 今回のレビューと
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