熟成みかん

人の醜さと美しさ
書評 人は自分勝手で醜いのだろうか。それが人間だからと優しく諭してくれる作品ながら、どこかそれでも人の美しさを信じてやまない作者の熱量がこもった作品だと感じました。 解説 薄味でさらっと読める文体ながらも、人の持つ嫌な感情がいたるところに形を変えて散りばめられていて嫌でも目に入ってくる後味の悪さのギャップが味わい深かったです。 その中で特に人を描く力が巧みだと感じました。 デフォルメされたようなキャラクターたちが物語を読み進めるうちにじわじわと人間らしさが炙り出されていく面白さを感じました。 井原がONE PIECEやGReeeeNが好きなこと。 多香子の冷酷さと律儀さ。 そんな多香子を想った若葉。 遥の優しさと内側の孤独など。  ぱっと主人公の視点からみると画一的に見えるキャラクターがストーリーによってそこにちゃんと生きているんだという存在感がありました。  登場人物の誰もが良くも悪くも自分のことが中心で世界が回っている。それ自体に善も悪もない。ということがこの作品のテーマの一つなのではないかと思いました。 そのテーマから逸脱した優しさを見せる井原のバックボーンが語られるシーンがまたリアル。 傷ついた人の優しさの痛々しさ、切なさ、儚さが美しく表現されていたと思います。 物語も最高のクライマックスを迎え「ああ、いい話だったなあ」と油断しながら読んでいたら最後の最後での裏切り。 この先あなたに会えなくなるくらいなら、私の命はここまででいい。 作品のキャッチコピーの本当の意味がわかった瞬間の余韻がずっと後を引く名作です。 感想 井原もGReeeeNみたいな青春送りたかったと思うと涙が止まりません…😭
2件・1件
熟成みかんさま、レビューありがとうございます。 ここまでご丁寧なレビューを書いていただくのに、一体何度読み返し、推敲いただいたのでしょうか。貴重なお時間を割いていただき、本当にありがとうございます。 書評「人は自分勝手で醜いのだろうか。それが人間だから〜それでも人の美しさを信じてやまない作者」の箇所について、ハッとさせられました。 人の持つ本質的な身勝手さによって、傷付けたことも傷付けられたことも数え切れません。だけど救ってくれるのもまた人で、結局、彼らが持つ優しさや愛に何度も期待してしまう。 そういう思いが確かに胸の奥にずっとありました。無意識に本作品に投影していたのかもしれません。熟成み
2件

/1ページ

1件