家族だからこそ……。を考えさせられました。
高圧的な祖父に逆らえない父と母。抑圧された日々、そんな家庭に嫌気がさし、自分の生活費は自分で稼ぎながら大学へと通う主人公は、無理がたたりアルバイト中に倒れてしまう。体力的に追い込まれた主人公は、バイト先の友人から紹介された「おやすみテレフォン」という怪しげなバイトを始める。そのバイトは、電話越しに人の話を聞くという内容。思ったよりも健全なバイトだった。ある晩、新規のお客様からの電話。その声は、自分の父親だった。 「おやすみテレフォン」という怪しげなアルバイト。イマドキありそうなリアリティのある設定。それを作中では、上手く役立たせている。 父親の声に気付いた主人公の焦りや感情の動きが上手く表現されていて、物語へと読者を引き込んでいく。 家族だからこそ、こじれてしまった感情の縺れは、心の奥に深く根付き、なかなか許容できなくなる。「おやすみテレフォン」というアルバイト中の主人公は、むやみに電話を切る事も出来ずに言葉を選びながら、父親の話しを娘としてではなく、一歩引いた目線で会話を進める。そこで父親の苦悩を知ることとなる。 読者は父親を主人公の苦悩と心の葛藤に触れ「もしも、自分だったら……。」と思わず考えてしまう、力のある作品でした。 希望が見える最後。読後感も良い作品でした。
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