吉田安寿

ちゃんとした痛みを伴う成長の物語
最後まで拝読した今あまりに切なくて、心にぽっかりと穴が開いてしまったようです。 学校生活はまさに井の中の蛙状態。狭い世界しか知らず、仲間外れにされたり、いじめられたりしたら、それこそ人生が終わったように思われ、心底恐ろしいと感じる子も多いでしょう。七ちゃんも初めはそんな子でした。 彼女が非人道的な「ゲーム」に加わってしまったのは、「自分」というものが確立できていないために流されてしまったからですが、そのことで伊原君と友達になり、ちゃんと自分を見てくれる彼に救われ、他人の言葉や評価に惑わされない強い気持ちと、一人でも平気という自己を得られたのは本当に良かったです。もちろん、そのためには大いに傷つき、苦しい思いもしましたけれど、そういうことなしに本当の成長ってできないよなぁ、と改めて考えさせられました。 心理療法に「箱庭療法」というものがありますが、なるほど、七ちゃんの劣等感、伊原君のトラウマ、多香子の家庭事情……クラスの在り様は生徒たちの秘めた心理が表れる箱庭そのものなのですね。 最後はもうもうもうもうもうもう……(落ち着け) 二人は間違いなく連絡を取り合って、仲睦まじい交際を始めていると思い込んでいた私は、しばし放心状態になってしまいました。 七ちゃんが現在の彼との結婚に踏み切れないのは、伊原君がどうしているか確認してから次へ進みたいのかな、と思いました。一人でも大丈夫と自信を手に入れて、現在の幸せを手に入れることができたのは伊原君のおかげだから。 伊原君の優しさは成熟していて、とてつもなく大きいけれど、常に自己犠牲のような遠慮が伴っていることが悲しかったです。虐待のトラウマがそうさせるのかもしれませんが、彼こそ自分を大切にしてほしい。どこかでささやかな幸せを手に入れてくれていることを願わずにはいられません。 素敵なお話をありがとうございました。
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吉田 安寿さま、レビューありがとうございます。 (夏休みに入りバタバタしており、お返事が遅くなってしまい、申し訳ございません…!) ご覧いただきありがとうございます。 人の心に残り、思わず引きずってしまうような作品を作りたかったので、心にぽっかりと穴があいたようというお言葉は、正直なところ嬉しいです…。 吉田さんの仰る通り、家庭環境や交友関係のせいで自己肯定感が低くなり、常に他者からの評価に怯えていたななが、伊原の無償の優しさを受け、成長する物語なのだと思います。 痛みや苦しみなしでは本当の成長はできないというお言葉に、なぜか私自身救われた気持ちになりました。 今まで自分が経験してきたこと
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