純風満帆

歴史に怪異を組み合わせた大作
最後まで読ませていただきました。鎌倉時代には詳しくありませんが、文章が読み易くすんなり物語の中へ入っていけました。 作品を支えるのはやはり登場人物なのだなと思うくらい人物の個性が豊かでした。一人ひとりの設定に過不足なく、言動にぶれがないです。そして地の文の上手さにも圧倒されます。状況がよく伝わってきて語彙も豊富です。作者の筆力の高さを感じました。 物語の構成がシンプルで明解なのもいいです。「静御前の霊の正体を突き止める」という謎解きは「静御前って誰?」という知識量でも興味を引きます。本題に入る前にも「鶴岡八幡宮に文を送ったのは誰」「朝顔の庵での怪異は」などの謎が用意されており、物語に引き込まれます。 (ネタバレです) 特典のこぼれ話を読ませていただく前までは、「もし静御前の子供が生きていたら」という着想からこの物語が生まれたのだと思っていました。赤子は殺されているという事実も作中に含めると展開が難しいと思いきや「そういう手があったか」と驚きの設定で楽しませてくれました。P227~P233はこの作品の一番の見どころでとても読み応えがありました。 どうして薺が頼家の元へ直接訪れなかったのか気になっていたのですが、後に尼僧からその理由も明かされて納得です。その際に狐のもののけの謎も明かされますが、別のシーンで明かされる方が復讐話に集中出来て良かったような気がしました。 輔子のP260のセリフ「過去を取り戻すことはできずとも~新たな糸をかけることはできるのですね」がとても心に響きました。 最後に。荼伽王が終盤親近感のあるキャラになって鴫丸と打ち解けていたのは微笑ましかったです。しんみりとした中で笑いを誘うような邦通のセリフで締めくくったラストは、良い読後感が残りました。 以前丁寧な感想をいただいたのでお礼代わりにこちらからも送らせていただきましたが、時代背景に疎く細かい部分に注目出来ない読者からの感想で失礼します。いつか能の「二人静」を見てみたいです。この度は面白い作品を読ませていただきありがとうございました。
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素敵なコメント、ありがとうございます! 長い作品でしたが、最後まで読んでいただき、とても嬉しかったです。 歴史考証など甘いところも多々ある作品ですが、楽しんでいただけたなら幸いです😌
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