真田

歴史と伝説を旅する、楽しく優しい物語
拙文ながらレビューを失礼致します。 時代ものの落ち着いた雰囲気と平明で柔らかい文章に惹かれて読み始めたのですが、完結までとても面白く拝読させていただきました。 隠居した官吏とその使用人の青年という一風変わった人々が主人公ですが、読み始めから彼らのこともすぐに好きになりました。 ファンタジー要素のある物語はとても読みやすく、オカルトやロマンチックな要素も多分に含んでいるのですが、全てが史実的根拠と筆者さまの知識の上に組み立てられており、平易に綴られる文章のうちにも深い考察や教養を感じさせられました。歴史的なイベントやモチーフをふんだんに詰め込んでいるのに説明的な印象や詰め込まれる感覚がまるでないのも、筆者さまの筆力を感じました。 物語全般を通して貫かれている、歴史と人の世に対する労り見守るような眼差しが、読み手を優しく導いてくれるように思いました。この眼差しは主人公である邦通さんの想いと眼差しそのものでもあったのでしょうか。 最後に、鴫丸くんの将来がとても気になっています。暖かく見守ってくれる主がいるので心配はないと思いますが……彼らのこの先をもっと見ていたい、そう思わされる物語でした。邦通さんが別の怪異を解決する次作などがあれば、ぜひ読んでみたいなぁと思いました。 素敵で素晴らしい作品を、本当にありがとうございました!
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