織り糸一本のような
 互いを想う故の行き違い、すれ違いは強く胸を締め付けるものがありました。ただひたすらに、読後の強烈な切なさに痛みを感じています。  兄と妹、二人の関係性は幼き頃の出来事から通じて織り糸一本のような張り詰めた脆さで保たれていたのでしょう。まるで「賢者の贈り物」ように互いが相手を思う気持ちは通じ合わず、それぞれの一方通行はこのお話では悲劇的に流れていきます。交差したもう交わらないその慈しみは、ラストシーンのただひたすらに切ない描写に収束しており、読後の痛みを連れてきました。  悲しい。弱い立場同士の共依存をまざまざと描いたこの短編小説は、オマージュ元「鶴の恩返し」の鶴が贈った反物を簡単に売り払う男に感じた違和感を思い出させながら、ままならない相手への本位性を知らしめた名作でありました。  とても良い読書ができました。  ありがとございました!

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