ともなり

超・妄想コンテスト『静けさの中で』裏会場👑銀賞受賞作品
寡黙な猟師の息子のお話。全編にわたり舞台は雪景色で『音を吸収する』と言わしめたり、会話シーンがほぼなかったりと寒さよりも沈黙が強調された中で淡々と運ぶ物語は、主人公が引きずる母の面影の描写が上手く孤独感を引き立てていました。 主人公は自分や父がその生活様式や普段の在りようが人間よりも獣寄りであると考え、それが母を遠ざけてしまっていたと考えている事が度々言われていましたが、話を読む限りそれは勘違いにも思え、そもそも母が何故あのような父の元に嫁いだのか、何故家の中でも快活な声を出さなかったのか、そう言った事を考えると耐えられなかったと言うよりは、いてはならないと判断をした様にも思えました。 主人公は実際は獣寄りと言いつつ都会人にも似たある意味に人間臭い生活をしているにも拘らず、それが分からない辺りが他人と交流が少ないことを印象づけ、それが幾らか切なさを感じさせもしました。 物語の背景に常にある雪は、無彩色の白と共に他との接触を遮る壁として常にあり、それゆえ微かな感情すら彩として映えさせ、すぐそばにあるものとの距離を過剰に遠くさせる舞台装置として一役買っているのには感心させられました。 何度かある劇的シーンをあえて劇的に描かず、それによって逆に印象づけるのは見事だと思いました。
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コメントいただきありがとうございます。 「静けさの中で」を書く上で無意識のうちに他者との関わり(雑音)のない世界観にしていたのかもしれません。 静けさの中では小さな音さえ際立つ。小さな感情さえも。だけどあまりにも大きな沈黙は全てを押しつぶすかもしれない。いずれ雪は全てを覆い隠してしまう。どんなに大きな喪失があっても。 微かな感情を際立たせること、劇的なシーンで雪解けさせないことが今回のテーマだったように思います。 群れから放り出された彼は、ひょっとしたら人間として生きる道を選ぶかもしれない。その時こそ雪解けが訪れるのかもしれませんね。
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解説ありがとうございます。より理解が進みました。
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