小池正浩

 音楽を好きでよかった。  世界的コロナ禍で「不要不急」という抑圧により、さまざまなアート領域が実利とモティベーションの両面で厳しい状況に追いつめられ苦境に陥ったのですが、その逆境は逆に、あらゆる表現する者が物理的にも精神的にも閉じ籠ったがゆえの、孤独な、どん底の底のそこから、いまこそ何を生みだすのか発するのか、まさに試されたのではないでしょうか。見つめなおしや覚悟を要求されたというか。簡単にいえばようするに試練、鍛練の時期だったというわけで、たんなる流行りものにのっかった半端なものはサヴァイヴできる余地などなく、淘汰という環境の選択圧は人間の存在意義を、欲望を根本的に問いなおし、ほんとうに大切なものは何か、あらためて考えることにも結果としてなったのでは。もっと簡単にいえばつまり研ぎ澄まされて、凄い作品すばらしい作品がここから多く生まれてくる可能性が高いと。  BUGY CRAXONEの『1月23日』『10月7日』『3月10日』『チャーミング』、SHISHAMO『6』『7』やその後発表された『マフラー』や名曲中の名曲『ハッピーエンド』、Syrup16g『Les Misé blue』、ちゃんみな『ハレンチ』『Naked』などなど、僕が愛聴しているアーティストだけでもこの二、三年でこれだけいいものをつくっている。  けっこう何かの作業中や制作中に音楽を聴きながらって人もいるのではないでしょうか。むかしから漫画家には多いって聞きますし、むずかしい手術をクラシックでも流しながらする外科医の話もわりかし有名ですよね。僕は小説を書くときも評論を書くときも、かならず何か聴いています。そのほうが外界をシャットアウトして創作に集中できる、物語に没頭できる、というかボーッとしてしまっているときもたまにありますけど。聴く曲は、作品とちょくせつ関係あるわけでも連想するわけでも僕の場合はない。どっちかっていうと好きなアーティストの新曲を聴きこみたいがために執筆するっていう逆転現象に気づけばなっていることもあります。  ちなみに最近「革命的新文学」で集中連載した春野わかさんの作品批評のときはずっとKing Crimsonを聴きながら書いていました。べつだん深い理由はありません。とくに『Starless and Bible Black』収録の『Fracture』は名演、ほんとうに凄いすばらしい。
1件・1件
音楽を私は聞くタイプじゃないんですが、音楽から盛り上がって作品が浮かんだりペーすが進んだりするの最近になってまた思って聞くようにしてます キング・クリムゾンかあ 名前は知ってて聞けばわかるんですがすぐに浮かばないとこが音楽音痴だからなんでしょうね
1件

/1ページ

1件