エブリスタ
さがす
本棚
通知
メニュー
コメント
小池正浩
小池正浩
2023/6/30 0:31
どんな創作者でもけっこうそれぞれにこだわっているというか、とらわれているというか、意図してあるいは意図せずとも、作品のなかでくりかえし描くモティーフというものがあって、たとえば画家の藤田嗣治でいえばそれは「猫」で、『自画像』『横たわる裸婦と猫』『争闘(猫)』『猫のいる静物』等々と生涯にわたってほんとうにたくさんある。小説家の島田荘司なら『異邦の騎士』『眩暈』『エデンの命題』『ネジ式ザゼツキー』といった一連の傑作群に共通しているのが「記憶」、その生成過程が現実と幻想を対立的にではなく融合的に生みだすという認識や構造の物語。THE YELLOW MONKEYには『LOVERS ON BACKSTREET』をはじめ『Romantist Taste』『悲しきASIAN BOY』『天国旅行』『球根』『SO YOUNG』『パール』など、節目節目にいつもかならず性と死を「花」のイメージにたくして歌われた楽曲が多い。クリストファー・ノーラン脚本・監督の映画は最初期の『メメント』から、時代背景や題材は毎回ちがえど『プレステージ』『インターステラー』『テネット』にいたるまで、そのほとんどで一貫して主題となっているのはすべて「時間」に関係する映像表現、とくにそれがアイデンティティの根幹に、自己と世界の存在意義にかかわっているのだというメッセージ。そんなふうにしばしば個性の強いクリエイターのなかには、作品ごとに作風は変わってもテーマはおなじという者もめずらしくないわけで。作家ごとに頻出するモティーフ、こだわりのテーマというものを列挙して一覧表にでもしてみると、おもしろいし興味深いことがわかるかも。っていうか、すでに誰かがとっくにやっているのかもしれないけど。 かえりみて、じゃあ自分はとうなのだろうかと客観的に分析してみれば、はてさて、うーん、ああ、そっか、やっぱりあれかな、虚実とかになるか。むかしから読むのも書くのも、作中作とかメタフィクションとか、めっちゃ好きですもんね。おもえば、初めてまとめあげた(創作したというよりまさに編集したといったほうが正確な)小説も、その作品内で言及したように中井英夫の『虚無への供物』みたいなリアルな虚構の物語を自分も紡いでみたいというのが執筆動機だったし、それだけじゃなく、あとあとよく考えてみたら、あれはあきらか泡坂妻夫の『11枚のとらんぷ』じゃん、と。
いいね
・
3件
コメント
この投稿に対するコメントはありません
小池正浩