夜中でも明るく暑い場所ではセミが鳴きます。 セミは主に光と気温に反応して行動するからだそうです。 では暗くなり気温も下がった場所で、鳴いていないセミは何をしているのかと言うと、とりあえずビールならぬ、とりあえず樹汁でしょうか。 樹液とは限らず、木の幹から吸い取れる薄い汁でも飲むらしいので樹汁です。 針状になっているクチバシを、まぁまぁ固い木の幹にでも平気でぶっ刺して樹汁を飲みながら、昼間録画しておいた高校野球を観ます。 数年から十数年、地下で家屋から聞こえる音声だけで楽しんできた高校野球を観るためにわざわざ夏に羽化することにしたのですから、これだけは譲れません。 昼間も窓越しに人家を覗いて観てはおりますし、その熱狂的な応援の声があの騒々しい鳴き声なわけですが、昔と違って高校野球を観ている家が少ないので、やはり録画は欠かせません。 で、観終わる頃にはすっかり酔っ払ってしまいましていつの間にか寝落ちするわけですが、セミのクセに寝るのかよ、という疑問はもっともです。 昆虫ごときに何の睡眠が必要なのかと。 睡眠とは概ね、脳を休め脳内の情報を整理するために一時的に意識を休止する状態であり、あんな外骨格野郎に脳などあるのか、などといささか不適切な発言も禁じ得ません。 しかし昆虫にも脳はあり学習や記憶をしているのです。 しかも脳とは別に胸部と腹部にも神経のかたまりを持ち、手足や羽などがそれぞれで独立して素早く動くことができますので、ある意味で高性能です。 高性能であれば疲れて休む事も必要でしょうから、寝るのです。 然して翌日、二日酔いに苛まれつつも目覚めれば、雨で野球は中止でした。 雨の日は光も弱まり気温も下がるため完全にオフです。 とりあえずゲーム実況でもしながら、片手間に皮肉も込めて妄コン「雨よ降れ」に投稿などします。 『どうせ俺はモテないんだから、いっそ雨が振り続けてセミ全員出会いなど無いまま夏が終わって寿命を迎えて絶滅してしまえばいいんだ』 などという退廃文学作品は、審査でそこそこ評判良かったそうですが、途中の高校野球描写がしつこいという理由で落選しました。 御入選の皆様におかれましては誠におめでとうございます、と謹んで祝意を申し上げますと共に、失意のままもうじき生涯を終える名も無きセミ作家には深い哀悼の意を捧げたいと存じます、ミンミン。
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師匠! その作品、お読みしておりませんが、ご親切に概要解説いただき誠にありがとうございます。 実に、実に面白く、ミンミン、チューチューしてしまいました。 セミ作家に座布団五枚!!!!!
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屋外で高校野球の音や映像を流すとセミが集まってくるという都市伝説があるとか無いとか( --)ノノ 笑
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