小池正浩

 ゾーンに入るっていうんですか、覚醒とかいうあれ、あの状態じゃないかとまさしく、マカロニえんぴつのニューアルバム『大人の涙』、まちがいなくまごうことなきマスターピースじゃんと、ハードロック色抜群のギター奏法も自由に風味ゆたかにフィーチャーされたキーボードアレンジも機微のあるベースのタイト感とフレーズも全曲たのしくてすばらしいのはもちろん、雑種天国たる日本文化の本質ごった煮のでたらめ性ともいうべき独自性、日本のロック、日本語ロック、日本のロックンロールバンドに脈々と継承されるパロディ精神であるとか諧謔性であるとかいったようなようするにユーモア、ユニークな音のマジックがそこには確実に核心にあります。とくに先行曲の『悲しみはバスに乗って』はリリース後すぐ一聴して気に入りましたし、ここだけの話めちゃくちゃ泣けました。泣いた、泣けたなあ、ひとり聴き入っておもわず号泣しましたね。  ま、それはともかく、じつは先月ひそかに完結させたホラーテイストの自作、あの作品を書きあげるのにずいぶん支えになってくれた曲でした。ひたすらリピート再生しながらラストスパート、最後の最後まで執筆の伴奏に伴走してもらいつつモチベーション維持のサポートもしてもらい、おかげで無事完走できました。無事っていうよりはってまあ、あれこれいうのはやめときましょうか、また自画自賛の自慢になっちゃって無用な反感を買いよけい読まれなくなっちゃうので。ただひとつはっきりいえるのは、時流に逆らって地味ながらぶっ飛んでるよなあってことですかね。書きやすくも読みやすくもあるアクション描写はないし会話文もほとんどないに等しい、どころか登場人物もほんとうにほんの二、三人と数えるほどだし、ホラーテイストなのに流行りのサヴァイヴァル要素も定番のバトル場面もなし、本格といっても目立つ名探偵キャラもいない、でも謎はリリカル、核はロジカルという、特別仕様かつ特殊構造のオリジナルって結局ちゃっかり手前味噌じゃないかよと、いいながらこの調子で懸案のメタフィクションもぼちぼち完成させますか。誰も読んでも待ってもないだろうけど、という意味ではこの独り言もですが、ほんとうに自分でいうのもなんですがね、いまのうちですよ買いなのは、いや反感じゃなくて株っていうんですか僕の。予告するわけじゃないですが宣言しときます、僕もゾーン入っている、いや入っていくかも。
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