メリーバッドエンド!
 正直に言います。  前半ページは、衝撃度の高いDVと性描写で不幸と復讐を描いた「短編によくある流れ」と思ってしまいました。  しかし中盤からラストシーンに至るまでに、読者はミスリードしていた事に気付かされます。  読了後、僅か気付いた事を究明するように読み返し、痺れるような対比や理由のある異常性に切なささえ感じました。  途中に登場する「シチュー」というアイテムも、家族愛や慈しみと共にイメージする幼児性を滲ませていた事に思考が巡り、ラストシーンに見せるオープン・エンディッドが「角が歪」なメリーバッドエンドだと知ったのでした。  いや凄かった。  賛否両論ある作品かとは思いますが、細部に至るまで考え尽くされている事を忘れてはいけない小説かな、と。それの思いを抱いて三回も四回も読みたいと私に思わせてくれた、僅か4,000字の名作短編小説。好き。
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トコさん、レビューありがとうございます。 まさか苦汁までレビューをいただけると思っていなかったので、とても嬉しいです。 トコさんの仰る通り、本作は一番賛否が分かれる自作品だと思います。 伝えたいものは単なるエログロや不快感ではなく、「家族だからこそ捨てられない苦しみ」と「家族として救済する責任と愛情」でした。トコさんのように深く読み解いてくださる方に読んでいただけて感無量です。 父親にされてきたことを主人公がやり返していく対比の構図は私も気に入っております。 登場人物の行動には動機をつけるよう意識しているので、「理由のある異常性」というお言葉も嬉しいです。 シチューにまで言及いただけるとは…
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