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それはきっと、夜明け前のブルー【改稿版】
友治サラ
2024/3/10 21:24
爽やかで真っ直ぐで、苦くて青くて甘酸っぱい。これぞ青春小説。
作者様の小説を読ませていただくのは本作で二作目ですが、すっかりファンになりました。 良かったところはたくさんありすぎて全てを書き出すことは難しいのですが、ひとつ挙げるとしたら、中盤にある海のシーンです。 読了した時、そこが黒崎くんと詩ちゃんの大きな転機になったのだと気づき、愛しくて堪らなくなりました。それはきっと最後まで読んだことによって、詩ちゃんがこの時どんな荷物を抱えていて、黒崎くんの言葉から何を捉え、何に救われたのか、よくわかったからです。 海から帰りその日の出来事を反芻するシーンで、まだ詩ちゃん自身も理解しきれてない感情が溢れ出て止められなくなってしまうという場面があります。そこも含めて読み返してみると、海のシーンの尊さが更にわかると思います。 トラウマも、日々重くなる憂鬱も、美しい海の記憶と共にたしかに塗り替えられていくのに、そこから発生する涙は単純ではありません。その時の詩ちゃんの感情が読んだ人間に重なり、書かれていない涙の理由が理解できる。書かれていること以上のことが読み取れてしまう。だからこそ、どうしたって切ないのです。小説の良さってコレだよなと思わされました。 それから、この小説はやはりキャラクターが良いです。全員ちゃんと今現在を生きていて、未来に、過去に、悩み苦しみながら成長してゆく様がよくわかりました。 簡単に書かせていただくと、例えば詩ちゃんは言うまでもなく、黒崎くんの誠実な生き方をみて過去と向き合い、一歩踏み出すことができます。 黒崎くんは、不器用ながら一生懸命に生きる詩ちゃんをみて強さの種類を知り、無意識下でのことかもしれませんが、それを己の強さの一部に変えています。 元凶ともいえる朝陽くんは、単なる当て馬とはとても思えません。善悪もわからない程幼い頃に犯したてしまった罪の重さを、手遅れになってから知り、十数年もの間背負い続けてきた。おそらくそれに耐えられなくなり、許される理由ほしさに詩への恋を続けていたのだと推測できます。しかしそれも、詩ちゃんが歩き出したことにより、背負うものが変わったように感じました。 白石さんやマリちゃんはもともと悪役ではありましたが、二人とも詩ちゃんが向き合ったことによって視野が少し広がり、本当の友情の在り方を知ったのだと思います。 いつかそれぞれの視点のストーリーも読んでみたいです! ↓続く
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友治サラ
3/10 21:27
つづき そして、これらのキャラクターを読むことにより、私も赦されたような、成長できたような、真っ新な気持ちになりました。 幼い頃の傷や、いい歳になってからついた傷を気にすることは、時に大袈裟だと捉えられ、また、自分でそれを認めることや他人に話すことも憚られるという風潮が現実にも存在すると思います。 実際は、傷つくことに年齢や時間の流れなど関係ありません。労わることのない傷跡はいつまでも疼き、膿んでぐちゃぐちゃにになり、命までも蝕むものです。軽視していいものはありません。そして、詩ちゃんと黒崎くんがそうであったように、人間につけられたその傷を癒すものも人間しかないのかもしれないと思わされまし
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