絶対的な容れ物
 春からの新たな"友達"との幼稚な罰ゲームで、無口なクラスメイトの男子・伊原と"友達"になる行動を求められた主人公・なな。  それまで存在を軽んじられて生きてきたななに対し、大切に扱ってくれる伊原との日常に、彼女は安らぎを感じるようになっていきます。  絶対的な容れ物として存在する学校という「箱庭」の中で、この二人と"友達"のそれぞれが経験した出来事にそれぞれの正義や哲学や背景がある、という相対的な個があって、主人公・ななが大切にしようと思った関係のそういった尖り凸りの角を落とすような必死さに、とても切ない気持になりました。  そんな中で新たに出来つつあった伊原との関係を守りたかったななの必死さはとても尊くて、胸の鼓動を感じるような共感を持って読みました。  物語は、伊原との時間を描いている部分には精神の安寧の裏の罪悪感、"友達"や"家族"との時間には終始張り詰めた焦燥感を感じました。  いずれもななにある正義と行動できない臆病さが彼女の中で闘い続けているもので、これ程までに読者をグッと惹き込んでいく「逸れる事の出来ない見えない力」を描かれた作者様に完全にヤラれた感。めっちゃ凄いと思いました。  回想方式を用いた冒頭とラストシーンも、よく考えられている「暗喩」と「リアルさ」と「言葉選び」がありました。技術的にも優れている小説ではありますが、それをひけらかすような描き方ではありません。ひたすらに「囚われた心」と「愛おしい君への想い」を真ん中に据えているので、すんなりと感情移入しながら読めてしまうのに、ずっと切なさが残り続ける読書時間。物凄く尊い時間でした。  最高に素敵な小説。とても面白かったです。  ありがとうございました。
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トコさん、レビューありがとうございます。 返信が遅くなり申し訳ありません。 「伊原との関係を守りたかったななの必死さはとても尊く」というお言葉にななの気持ちを思い出し、泣きそうになってしまいました。 トコさんの仰る通り、この年代の子たちにとって学校は絶対的な容れ物で、自分の価値を決める世界のすべてなのだと思います。 一番大切にすべき人は誰なのか頭ではわかっていても、手にしている安定はそう簡単に手放すことはできない。 自分を大切にしてくれない人に縋り付く必要ないのに、と第三者は思うかもしれませんが、当事者には難しいんですよね。 ななは臆病で保身的で強かだから、伊原と違う男性と結ばれることを選び
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