農民C

どうして。どこにいるの。どこへ行こう。
交通事故(未遂)でまさかの歩行者側が吹っ掛けられるという衝撃展開から始まるこちらの作品。 表情も反応も薄く幸薄儚げな小市民・大倉玲さんに対し、俺様気質で横暴な魔王様・月城一成さんが悪逆の限りを尽くしながら溺愛していくお話……かと思いきや? ミステリアスな流れが綺麗にまとまりつつ、作者様の既出作品の例に漏れることなく情緒ぐっちゃぐちゃにされる要素の詰まった、凄味のある物語です。登場人物みんな愛しくなります。 序盤はよいよい、から攻め様や読者を鮮やかに翻弄する怒涛の展開。夢中になってページを繰った先で、ため息がこぼれるほどのカタルシスとしんどさ尊さをたっぷり味わえることでしょう。 place to beを見失った子が見つけたもの、出した答えは何か。まあぶっちゃけハッピーエンドと明言されておられるので最後はくっつくのが分かりきっているところかもしれませんが、そこまでの過程がとっっっても美しいので、未読でしたら是が非でも読んで下さいませ(迫真) ↓↓ネタバレ有り↓↓ 性差や社会的地位ゆえの容赦無い理不尽の被害者を描きながら、「可哀想な被害者が幸せになりました」で終わらないのがただただ良い…。苦しいところも一成さんの明るさで救われました。 生きるよすがを怒りの中にしか見出せなくなった玲ちゃんが、由良さんや涼君、そして他ならぬ敵であったはずの一成さんによって、ある意味段々と生まれ変わってゆくのがたまらなく好きです。運命を拒絶しつつ愛を知り自ら運命に答えを出す、とっても良質なオメガバースもの。玲ちゃんの「この人を愛することになるのだろう」という終わり方でまた心がぎゅんとしました。あまりによすぎる。 作者様、素敵な作品をありがとうございました!
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