出雲黄昏

『独り剣客山辺久弥おやこ見習い帖』拝読しました。 ありがたいことに、時代小説なるものを食わず嫌いしていた僕に新しい世界を見せてくれました。心から感謝申し上げます。 恐れ多くも、正直に白状しますと、言葉が難しくて読むのに苦労しました。いや、僕がこの分野に明るくないとか、単純に言葉を知らないのが原因なのです。ただ、読み進めているとなんとなーく読めている気になっていました。(多分読めてない) ですので、時代小説素人の稚拙な感想です。と、保険をかけまして、日ごろの感謝も込めまして、少しでも今後の執筆活動のお力になれたなら。そんな思いで、僭越ながら。 まず印象に残った部分を挙げれば。122pの描写からの141pでの言及。無音を描くということに、悶絶した。この描写によって後の音楽描写の音が鮮烈になり、後半にかけての深みになっている。無音、あるいは「間」を表現することによって、小説としての音楽性、リズム感が確立された。小説だから成し得る音楽の表現がたしかに宿っていた。この表現、すごすぎて僕は笹目さんに嫉妬しました。これはやはり参考文献の量からもわかる。生半可な描写は許さないという笹目さんの情熱であったり、ご覚悟あってのものと推察します。敬服します。 後半の川中との戦闘シーンも痺れました。息をのむ展開に、丁寧な描写。この部分は時代小説素人の僕でもぐっと引き込まれる部分でした。めちゃくちゃ熱くなりました。 青馬との再会シーンでは、胸に込み上げるものがあり、鼻を鳴らしながら涙が零れました。あれはずるい、絶対泣くやつじゃん。 作中で最も僕の心を貫いた言葉、124pの久弥の心理描写『与えてやれるものがある。それはなんと幸せなことだろうか。』この一文を読んだとき、心底震えた。人の命を奪い、嫌悪感を払拭できない優しい久弥だからこそ響く。青馬を拾った久弥だからこそ深い。交錯する久弥の家柄、関係性。時代背景。それらの中にあるこの一文。極めて秀逸。本作を象徴する一文に思えてならない。僕は、この一文を体感できること自体が幸せでした。 どうしても書き手としての先入観や、好きなジャンルの読み方をしてしまい、このような感想になってしまいましたが、どうぞご容赦下さい。もちろん、次作も楽しみにしております。僕に青馬ほどの才能はないだろうけれど、笹目さんは僕にとって久弥。益々のご活躍をお祈り申し上げます。
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出雲様、お心のこもった丁寧なご感想、まことにありがとうございます!!過分なお言葉にたいへん恐縮しつつも、嬉しく拝読いたしました。 普段お読みにならない時代小説を手にとってくださり、楽しんでいただけたと伺い喜んでおります☆ 音楽表現についてお褒めいただき、とてもありがたく存じます。なにしろピアノは弾いても三味線はおろか邦楽の素養もろくにない状態でしたので、三味線の響きとは、唄との関係とは、とプロ奏者や研究者の本や文献をあたり、自分で聴いて考えて…ということをしておりました。音楽がテーマの小説は元々好きで(蜜蜂と遠雷なども大好きです)、それらと引けを取らないレベルにしたいなと思って書きましたので、
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