脳内上映、最高の名場面を。
 地上に日光が届かなくなる。  『奇跡』の確率で太陽の光を享受していた地球の軌道が変わり、すると往々にして奇跡を逸した地上は生命を維持できなくなる。  絶望的な近未来を直前に、科学者である男女二人には地下に潜り生き残る確約と「血縁以外をひとり連れていける」という権利を持っているが……  咲き誇り舞い散る桜を前に、本文では詳らかには語られなかった決断までの心の揺れ動きを表した本当に美しい描写が、とても印象的でした。  恐らく現実の科学的には有り得るとは思えない事象(錯覚?)も、「この世界のこんな未来なら『奇跡的に』有り得る事なのではないか」と思わせてくれるような圧倒的な世界観への吸引力があり、心を引き摺られて無中にのめり込んで読んでいました。  後半にあった二つ目のクライマックスは、モノクロのイメージの中で、わっと浮かんだ茫漠の白とささやかな桜色が脳内に映されたようでした。本当に美しかった。  物語は、たった二人の登場人物の互いの不器用な主観が絶望の中でほどかれ、暗い未来にもほのかに生きる方向に推進していった様を描いています。  けして明るくはないストーリーなのに、生きることの意味を究明し本当にほのかで奇跡的な希望に気付かせてくれるような短編小説で、信じられないくらい感動してしまいました。  最終盤に読者が目撃する「お花見」のシーンは、脳内上映の名シーンになるのではないでしょうか。熱の無い地上にあたたかな救いが見える、最高の名場面。  どうかたくさんの人がこのお話を知れますように。
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トコダ トコさん……!素敵過ぎるご感想をいただき本当にありがとうございます……! 実は私は地底人が好きで(いきなりなにを、という感じですが……)地底世界も好きで……。 始まりはそんな自分の趣味でした。そこから人が地底に移住する状況は……と考え始め、このお話が生まれました。ただ、そうなのです。科学的に考えると作中の状況はなかなか起こりえないと申しますか(∀`*ゞ)エヘヘ それでもそれをあるもののように見せること。小説にはその力があるはずと信じて書いておりました。と言いつつも、私にはまだまだ力が足りず、読んでくださる方に受け入れてもらえるような世界を作れるだろうか、と不安も抱いておりました。 です
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