若い頃の輝きが鮮やかな演劇の記憶とともに甦る
大佐戸さんの作品は病院を舞台にした作品が多い印象なのですが、この作品は主人公の女性が勤務する病院(現在)→高校の演劇部だった青春時代(過去)へと時間軸が移り変わりながら物語が進みます。 主人公の倉科の先輩たちーー演劇部の三年生が高校最後の芸術祭で『廬山夜雨』という作品を演じるのですが、劇の描写があまりにリアリティに富んでいるがために、舞台の背景や緊張感、役者たちの衣装や表情や声色、観客の様子までもが鮮明に浮かんでくるようで、気づいた時には本当に観客になって舞台を観ているみたいに没頭して読んでいました。 演劇部のエースであった女の先輩ーー。 舞台の上では華やかで堂々として見えた彼女が、実はある秘密を抱えていたことが、過去の回想と現在を行き来する中で徐々に明らかになっていきます。 終盤まで核心に触れることなく読者の意識を釘付けにする語りは秀逸で、流石ベテラン!と言わざるを得ません。憧れの先輩の秘密が明らかになった時、高校時代に舞台の上で輝いていた彼女とともにあった煌びやかな日々の思い出がより際立って、何とも言えない切ない気持ちにさせられます。 演劇だけでなく、仄かに含まれるミステリー要素にも関心を引かれます。 演劇とミステリーが好きな方におすすめの一作です。
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たた、たらこ飴さん!ものすごく丁寧に読んで頂き、こんなうれしいレビューまで‥ほんとに励みになります。いつも美しくて躍動的で「生きた」言葉を紡いでいるたらこ飴さんに言われると、自信になるし、嬉しい限りです。ありがとうございました✨
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お返事ありがとうございます😊 喜んでいただけて光栄です! 実は去年になりますが、この作品を私のTLと Xで勝手に紹介させていただきまして。 その際の投稿がまだ残っていたので、文面そのままなのですがレビューとして使わせていただきました。 こちらこそ、素晴らしい作品をありがとうございます。
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