小池正浩

 King Crimsonの大傑作アルバム『Red』、僕にとっても大大大と大をいくつもつけたいくらい特別に大好きな作品なんですけど、発売50周年記念版がつい先日リリースされ、そのスペシャル・エディションのなかに収録されているエレメンタル・ミックスがサブスク解禁ということで、エレメンタル・ミックスとはなんぞや? というのはとりあえずおいとくとして、いま、まさにそのエレメンタルなミックスの音源を聴きながらこれを書いているんですが、いやはや、やっぱり凄まじくすばらしい、おそろしいほどの音圧、音粒、音塊、音数、音像の美しさ。変拍子やポリリズムをとことん追求しているという面では80年代のメンバー編成時の音が最高で個人的にはもっとも気に入っているんですけどね、実際これも先日リリースされたライヴ音源『The Sheltering Sky』を同時にもっか愛聴中。ところで、SHISHAMOの『いっそこの心臓の音が君に聞こえたら』(ストーリー性の高い楽曲に仕上がっているのはドラムのこまやかな表現力によるところも大きい)とか、ちゃんみなの『FOREVER』(前作の『NG』に引き続き歌詞の毒気がたまらない「クレカの信用0」のくだりなんてとくに)など、今年もいくつか名曲が生まれましたが、なんといっても本年度ナンバーワンのオリジナルアルバムは、The Last Dinner Partyの『Prelude to Ecstasy』でしょう。ああ、これです、これぞブリティッシュロック、これこそ僕の求め愛してやまないサウンドですと、おもわず叫んでしまうくらい(もちろん心のなかで)、妖しさ漂うダイナミックかつアグレッシヴで退廃的な音。デビュー曲の『Nothing Matters』でくりかえし歌われるフレーズ、 And you can hold me like he held her というのが、誰かのかわりであることまで受容した受動的な求愛表現であるのに対して、つづけて繋げてリフレインされる鋭い一節、 And I will fuck you like nothing matters というのが、主体性の強い挑発的な言葉なのに注目すべき、というか日本でいうところのサビがおもいっきり放送禁止用語でいいのってくらいの凄い覚悟を感じるわけで、『The Feminine Urge』のSuedeっぽさも頷けますね。
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