うづきあお

どこまでも人間というものに感動させられる。そんな物語……
読み終えたそのままの気持ちで感想を書かせていただきたいと思います。 まだ余韻から抜けきれず、タイトル回収のラストに目は潤みっぱなしです。 まず、私は普段時代劇ものはあまり読むことはありません。 ですので途中で振り落とされることもあるのですが、『春次郎の空』は出足からストーリーに入りやすく、気がつけば私がページをめくるのではなく物語に手を引かれるように読み進めていました。 主人公春次郎のそばへすとんと意識を落とされ、深掘りされた情景や人物の背景に深くのめり込みました。 どっしりとした土台の上で、一つ一つ色彩豊かに光っていたのが登場人物たち。 悪を成敗すればそれでいい。 そんな単純な期待を打ち砕くほどに誰一人手を抜かず丁寧に描かれており、皆それぞれの信念に迫力、息遣いがしっかりあり、大変魅力的でした。 立場は敵対する者でも相手は自分と同じ人間だという無情な事実を見せつけられるようで、人を斬る重みに終始ハラハラしっぱなしでした。 その中で春次郎が一番強くて光るのかといえば、そうではないのがまた面白い。 周りの個性が強烈に際立つ中で春次郎だけはむしろ無色透明。 それを未熟と捉えさせるのではなく、この先剣客としての未来を受け止めていく新たな器なのだと感じさせるところが深みがあって好きでした。 佳境を超えてからラストまでの流れは穏やかであり、過酷であった展開の落とし所がしっかり綴られているのですが、ここで何度も泣いてしまいました。 どこまでも「人間」というものに感動させられる、そんな物語であり、読後感は突き抜けるような爽やかさまでありました。 『春次郎の空』胸に残る物語となりました。 どうもありがとうございました。
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素晴らしい感想をありがとうございます。 実は時代劇を書いたのはこれが最初で最後でして、手探り状態で書いたので拙い部分も多々あったと思いますが、最後までお読み頂き感謝です。 あおさんの言う通り、他の人物たちが有る程度自分の”色”や”形”を持っているのに対して、春次郎はまだ無垢で、自分の色や形を形成できていません。 これから様々な困難を乗り越えて、青年から”男”へと成長していく、その最初の試練がこの仇討ということになります。 まだ先の見えない自分の未来に対し、覚悟と決意を持って旅立つ若者を描きたかったので、あおさんの感想は大変うれしいです^^ ありがとうございました!
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