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椎野さんの射るような目線をまったく気にする様子もなく、明智さんが再び僕へと向き直った。……寝癖、直せばいいのに。
「“やあ、私だ、みんなの久我亮衛だ”」
そ、そこから!?
「“実は私は今、非常に重大な任務についている。極秘なのでこれ以上は言えないが、まあ、とりあえずは無事だ。ただ、もし万が一あさってまでに、私から何の連絡もなかったら、すまないが”……」
ああ、そうだ、そこまで聞いた。非常に重大な任務って何だろう。怖い組織への潜入捜査とか?
「“すまないが、有給休暇の申請を出しておいてくれ”」
…………は?
そこ?
いや、意味が解らない。
「代筆でもいいのか?」
ネコ耳をつけたままの椎野さんが、真顔で尋ねる。いや、だから、そこ?
「パソコンで作ればいい」
明智さんも真顔で答える。いや、だから……まあ、もうなんだっていいか。
「で、とうとう3日が過ぎた訳だが、相変わらず班長の行方は杳として知れない」
捜索願いを──と言いかけて慌てて言葉を呑み込んだ。倉庫のような部屋に騙されていたが、ここは警察署なのだ。
「そこで我々は、班長の捜索に乗り出すことにしたのだ」
「あ、あの、事情は解りました……ですが、なぜ素人の僕が?」
「久我亮衛という男は、有給申請を他人に代筆させるようなヤツだ」
明智さんに代わって猫、いや椎野さんが語を継いだ。
「重大な任務とか言っているが、本当のところはどうなのか。だから、他の刑事に易々と相談もできねえ。一応ヤツの親族に当たってみたんだが、そういう事なら是非とも協力させてくれと、おまえが送り込まれてきた」
これまでの経緯を聞いた僕は、
・冗談じゃない、僕は関係ない
⇒https://estar.jp/novels/25650637/viewer?page=27
・確かに、内部の人間に事情が知れ渡るのはどうかと思う。仕方ない、協力しよう
⇒https://estar.jp/novels/25650637/viewer?page=14
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