武城 統悟

復讐というテイストのおとぎ話

復讐劇──というと深慮遠望が交差し、流血の飛び交う陰惨な物語というようなことを想像しがちだが、本作はちょっと違う。 伯爵令嬢のクリスティーは幼馴染の皇太子レイに冷たく振られてしまう。 クリスティーはレイへの復讐に燃えるのだが、この復讐の手段がユニークだ。 クリスティーはお妃候補の選抜に参加し、その選抜戦を勝ち抜き、レイに謝罪させると心に誓うのである。 なるほど、こういう復讐劇もあるのだなぁ。 面白いのはクリスティーにはこれといった権能がないことだ。 最終選抜に残った候補者たちは、国母としての品格、国を守る力強さ、深遠なる知性、優秀な経済感覚を持つ者など他士彩々。 それぞれの主張は至極真っ当で、
ネタバレあり
・2件・1件
武城 統悟

やさしさの教習所

45歳、引きこもりニート──というのがこの『蛍島教習所』の主人公だ。 ニートであるので特別な力もなければ中年なので容姿もかなり残念だ。それどころかコミュ障という厄介なスキルまで付いている。とても主役とは思えないキャラクターなのだけど、しかし、じゃあ彼が主人公である資格がないかと言えば、そんなことはない。 彼は誰よりも人のことを思いやることのできる優しい心持っているのだ。 物語はそんなおじさん(彦りん)が一念発起して、合宿で運転免許を取ることを決意するところからスタートする。 15年も外に出ていなかったおじさんであるので、人と話すだけで動悸が高まり、走れば息も絶え絶え。船に乗ればしっかり船酔い
ネタバレあり
・2件・2件
武城 統悟

少し先取りしてしまった事件簿

人類の歴史はテクノロジーの進歩と共にあったと言っていい。とりわけ直近20年、アナログからデジタルへの変化は劇的だった。 AIなんてものはSFや空想の中の話だと思っていたけれど、今じゃスマホの中にChatGPTがインストールされ個人で使える時代になっている。 『雨が似合う男』は少し先の未来、AIが人々の生活の中にいまよりも深く浸透した世界のミステリだ。 青春やヒューマンドラマを得意とする秋月さんの作品にしては異色の物語である。 主人公である押尾は作家を生業としているのだが、新作の構想に苦しんでいた。身近になり過ぎた情報端末により、作品にも既存の作品との違い求められるため、作家には他者とは違う人
・1件
武城 統悟

楽しく生きるためのヒント

ボーイ・ミーツ・ガールという物語があるけれど、これはガール・ミーツ・ボーイというお話だ。 ある雨の日、中学三年生の翼は一人の男子高校生に出会う。 フランス人の話をしながら学校まで傘に入れてもらったのだが、名前も聞かずに別れてしまう。やがて彼が隣の高校の生徒であると知った翼は進路希望を変更し、彼の高校へと進学する……。 この作品の主人公、翼は少々天然なところはあるけれど、明るく素直な女の子だ。こうと決めたら即行動というアグレッシブな一面も持っている。 明るく素直な──と言うと、どこかで読んだことがあるようなキャラクターに思えるかもしれないけれど、翼がそれらのキャラクターと違うのは、自分の意思や意
・1件・1件
武城 統悟

デジタル的な選別を飛び越えるエール

『陰キャ無双』とてもユニークな言葉だ。 普段籠もっているであろう陰キャでどう無双するんだろうと気になってしまう。 呼ばれ方もあるのだろうけど、どうしても 『陽キャ』は明るく楽しい。『陰キャ』は暗くてつまらない、みたいなイメージがつきまとう。 主人公千波は『陰キャ』である。『陰キャ』ではあるが、千波は、周囲との距離と自分の立ち位置、身の処し方を理解している思慮深い女の子だ。 対して、千波の友だちあすかは『陽キャ』だ。千波の正反対にいる女の子である。 性格が真逆だからウマが合うということもあるけれど、あすかも十分思慮深い。だから千波のことも理解できる。 二人とも他人を想いやれる気持ちを持って
ネタバレあり
・2件・1件
武城 統悟

それでも花は咲く

80年前、この国は戦争をしていた。 戦後、復興した日本に生まれた僕らはその悲惨さ苛烈さを知らない。 この物語はそんな時代のお話だ。 登場人物である清志と千代の思いを知るには、その時代を知らなければならない。 そのため『焦土に咲いた千代の花』は当時の状況を詳細に描いており、僕たちを80年前の日本に連れて行ってくれる。 この当時のリアルを知っているからこそ、ドラマパートがさらに生きてくるのだ。 個人的には千代と清志という名前が好きだ。 長い年月を意味する千代と、決して清いだけではないが千代を守りたいという一点については澄み切った心を持つ清志ーー。 そう考えると『焦土に咲いた千代の花』というタイトル
・2件・1件

この作品は非公開になりました

武城 統悟

物語に宿る漆黒のリアリティ

『雨の中の女の子』はそのかわいらしいタイトルからは想像もつかないような異能力バトルアクション大作だ。 登場人物が激しいアクションを繰り広げる作品は数多くあるけれど、本作が他のバトルものと一線を画するのはリアリティである。 主人公水月を始めとする登場人物それぞれに筆舌に耐え難い深い悲しみや苦しみを抱えながら生きている。 それに加えて新興宗教、ネグレクト、性加害……ともすればセンシティブな捉えられ方をする人間の欲望や社会の暗部とも言えるこれらの題材を西さんは真っ向から向き合い描いている。 まるでこの世界のどこかに彼女たちが存在しているかのようなリアリティ。 リアルではあるが、物語は当然フィクション
・1件・2件
武城 統悟

聖なる夜と愛の形

聖なる夜にはとても多くの物語があるけれど、まぽわぽんさんの紡ぐ物語は、戦時下のお話だ。 辺境にある小さな集落。辺境であるがゆえ、直接戦火に巻き込まれることはないが、しかし、戦争はこの小さな集落にも確実に影響を及ぼしていた。集落に住むフィナのもとに一通の手紙が届く。 召集令状。頼みもしないのに戦場に国民を送り込む忌まわしき手紙。そんなに戦争がしたいのならば、国のエライさんが先頭を切っていけばいいのに、先陣を切って戦おうという指導者はいない。実に迷惑な手紙だ。 その上、この国では兵士のために涙を流すのは侮辱罪になるというのだからふざけた国である。 出征の日、ユイベールはフィナに幸せになれと告げ
ネタバレあり
・1件・5件
武城 統悟

クシコス・ポストと小さな哲学者

クシコス・ポストという言葉をご存知だろうか。 ポストとあるから、まあ、なにかポストの一種ではあるのだろうと思って本編を読んだ。 ポストは出てこなかった。 おかしいな。何となくーーでタイトルをつけるとも思えない。Googleで検索してみると、郵便馬車であるらしい。 おかしいな。郵便も馬車も本編では出てこない。 とーー検索したクシコス・ポストの下の方に、運動会で親しまれているあの曲みたいな項目に目が止まった。 そういえばYouTubeでMP3の動画が出ていたなぁと再生してみると、ああ、これは僕も知っている。 なるほど、これは曲を知ってから読んだほうが絶対いい。 皆さんも読む前(読んだ後でもいいので
・2件・1件
武城 統悟

オーロラの下で君のことを想うとき

狐火というので和風の話かなと思ったけのだけど、フィンランドではオーロラのことを狐火とも言うのだそうだ。 物語は美しく幻想的なオーロラの空の下で一人の青年が辿ってきた道を回想するところから始まる。 彼、水原諒は入院した病院で二つ年下の女の子、琴川はるかに出会う。二人は意気投合するが改善飲み込まれる諒と違いはるかの病は治る見込みがない。 そんな状況ではあったが、深い絆に結ばれた二人は結婚を誓い合う。 素敵な物語である。 しかし、物語は予想しない形で暗転する。 頭上を揺蕩う光のカーテンの下、雪原に一人佇む諒。 隣に立っているはずのはるかはいない。 夢見た未来は消え失せている。 ここから彼はどうする
ネタバレあり
・1件・1件
武城 統悟

想いを貫く物語と紡いでいく覚悟

『それは毒めく口づけのように』 なんだか怖いタイトルだな、と思った。何か事件が起きそうだけど、事件は起こらない。恋の話だった。 麗は恋をしている。恋の相手は作家であり父でもある優だ。 彼の紡ぎ出す物語に胸を焦がし、書き記す言葉を抱きしめる。 文学の徒である優は、しかし、その文学と世の狭間で身を伏せる。弱く、崩れ落ちそうな心を抱え、生み出した言葉を自ら葬り去りながら過ごしている。 ともすれば消えてしまいそうな優をここに引き止めているのは、親らしいことなど一切してあげたことのない娘、麗だった。 狂おしいほど恋焦がれ、引かれ合う二人は、しかし結ばれることはない。結ばれてはいけない。悲恋である。 いや
ネタバレあり
・3件・1件
武城 統悟

魅惑のエンターテイメント

天に煌々と輝く月夜の晩、処は花の都パリ十二区にある墓地の前。止まった馬車から四人の男女が降りてくる。 黒衣に身を包んだ彼らは闇夜に蠢く人外の者たちを葬る啓明党魔物討伐隊だ。四人は対魔物用の魔道具を手に、暗がりに潜む魔物たちを殲滅するために墓地に足を踏み入れる……。 本作はオープニングがらドキドキするような展開が繰り広げられるエンターテイメントです。 物語は討伐隊の一人、ダナウを中心に進んでいきます。 アクシデントに見舞われたダナウが出会う少年ジルヴィ、彼といっしょにいる雌鶏リルー、魔術研究家ノッティラ・ノーフォーク・ノートリーヒ(通称ノノノ)など魅力あふれるキャラクターたちの愉快な会話に引
・1件・1件

結果発表した公式コンテスト

もっと見る

お得に読めるエブリスタEXコース

書きたい気持ちに火がつくメディア

エブリスタ発の人気作品まとめ

5分で読める短編小説シリーズ