个島

人は,その人生が誰からも認知されず,誰の記憶からも残らなくなったときに本当に死ぬのだと考える。 そのため,現実とは関係なく,時子の記憶に思い出として残っている限り, 一太はまだこの世から消えていなかったのだと思う。 だから,一太の葬儀の時には,彼との思い出を持つ時子だけが泣いていた。 そして,葬儀を行うことは,一太の死を一つの現実として扱うだけでなく, 時子にとっては,心的な世界で生き続けた兄との死別も意味していたと思う。 この決断は時子にとっては本当に勇気がいるし,辛いものだったはず。 選択肢として,墓場まで持っていくということだってできたのに, あえて葬儀を行ったのは,母からの遺言があったからでなく, 兄とともに生きた自分の70年の人生にしっかりと向き合うためだったのではないか。
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はじめまして♪レビューありがとうございます♪ 時子の心で一太は生き続けていた。 よし子が、時子に嘘をついたのは生きる糧としてほしかったからでしょうね。 糧として生き続ける一太との別れは時子にしか決めることが出来ない。 よし子との約束もあったでしょうが一太の生きた記録を残すこと、それが葬儀だったのでしょう。 おっしゃる通り、時子は一太と共に歩んだ七十年を向き合うためのことでした。 深く読み取っていただき、作者も改めて深く考えるコメント、感謝です♪
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ご返信いただき恐縮です。 時子のその後が気になりましたが、あれほど悲しめたのなら、きっとしっかり兄との別れを認めることが出来たのではないかなと思います。 おそらく、以前と変わらずに、「大好きな兄が居たこと」について後世に伝えながら過ごしたのでしょう。 きっと、最期は家族に囲まれながら旅だったのではないかと思います。 長々と失礼いたしました。 活動応援しています。

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