遥奏多

初恋は実らないと言うけれど
良くも悪くも、現実とはこういうものだと思わせる作品でした。 決して順風満帆ではなく、自分が嫌いで目的もなく日々を過ごしている、そんな本当にどこにでもいる女の子が、ちゃんと自分で前を向いて生きていけるようになる。そういう意味では、きっとこの物語はハッピーエンドなんだと思います。 かつて思い描いた未来ではなくても、今ある幸せを否定する理由にはならない。今ある幸せは、過去幸せな記憶があるからこそ築けたもの。そんなエピローグだと思いました。 登場人物全てに過去があり、個性がある。当たり前のことのはずを強く実感しました。人間がとてもよく描けている作品だと思います。 個人的には、深掘りされていなかった神堂と伊原の出会いやエピソードが気になりました。特に神堂はミステリアスでありながら少し子供っぽく、伊原のよき理解者だったと思います。伊原がいなくなった時、七よりも神堂の方がショックを受けたんじゃないかなと考えてしまいます。 すべた上手くいってほしい、エピローグの相手は伊原であってほしい。切実にそう思いましたが、そう上手くいかないのもまた現実。小説なんだから理想を追い求めてもいいと、そういう考え方もできますが、あえて全てを理想で終わらせなかったからこそ、この物語には様々な意味が生まれたのだと、そう感じました。
2件・1件
遥奏多さま、レビューありがとうございます。 言及してくださっている通り、本作はまさに「思い通りにいかない現実の理不尽さ」がテーマの一つでした。 【ちゃんと自分で前を向いて生きていけるようになる。そういう意味では、きっとこの物語はハッピーエンドなんだ】 【かつて思い描いた未来ではなくても、今ある幸せを否定する理由にはならない。今ある幸せは、過去の幸せな記憶があるからこそ築けたもの】 この部分に、思わず涙が出そうになりました。私自身、本作はどちらかと言えばバッドエンドだと思っておりました。伊原とななを一緒にしてあげられなかったことに、負い目も感じていました。 けれど、ななはあの頃より成長した
1件

/1ページ

1件