小池正浩

 よって、いまここで目の前にあってちょくせつ見も触れもする物質的なヒト・モノ・コトだけにかぎらず、言語や概念のように抽象的で記号化された情報というものも、人間にとってはひとしく実在しているものなのです。事物も情報もつまりは等価。これを換言すると、  情報=リアル  というふうにあらわせます。そしてここからが本題なのですが、人は誰しも物質的な世界だけでなく地続きで、抽象的な情報の世界でもリアルに生きているということ、それは原理的に、事実/真実/現実とデマや誤報やフェイクとを、容易には区別できないということを示唆します。峻別するのはむずかしい。もともと混在していて当然ですし、ほとんどの人にとって虚実も真偽も同質です。  くりかえしますが、情報は解答ではありません。原義的には本来リアルでさえもない。しかし情報はその性質上、事実や真実や現実を反映していると同時に、かつ同等に、デマや誤報やフェイクでさえもそもそもある。  さて、春野さんが再三にわたって批判されている「妄想」にまつわるお話、それから僕との「歴史の解釈」をめぐっての議論ですが、拗れに拗れて折り合いも決着もつかないのはこのあたりに起因するのではないでしょうか。  情報=妄想なんですよ、はなから極端な話。人によってはどんなものであれ情報は、解答にもなるし、リアルだし、妄想にもなりうるんです。いかに情報を解釈するか、いかにそこから解釈によって納得いく可能性(解答ではない)を導きだすか、解釈の施し方、精度、確度、そういった解釈する側の自覚や方法がもっとも大事なのであって、いかに情報の量や速度を増加させても、どれが正しいのか、どこまで確実なのか、しょっちゅう迷いますし、まちがうときはまちがう。  くわえて、人間は誰しも解釈せずにはいられない。謎を謎のままにしていられないから、自然と解釈してしまう。答えを決めたがる。こうなんだと納得しないと気がすまない。ためにあるいは、ほかの人間に解釈してもらう。  これを僕は要約して、物語化と称しています。物語を創作するのは、物書きだけではない。物語とは人間の認識のありかたなのですね。物語らざるをえないし、物語を受容したくてしょうがない。だからみんな、解答を得たくて真実を知りたくて、情報をもっともっと、と際限なく求めつづける。むさぼり溺れつづける、情報に。  つづきます。
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 歴史というものは謎が多い。だからこそ解釈を頻繁に誘発する。歴史家は生涯この謎に魅せられた人たちでしょう。ときに作家もまた魅了され、歴史物を創作する。どのように解釈するかという自覚や方法に差異があるだけであって、そこにもちろん優劣もなければ、解釈そのものに本質的なちがいはありません。学問的に体系化し客観性を重視するか、多少リスキーでも想像力で補い膨らますか、そういったヴェクトルの差があるだけでどちらが絶対的に正しいということもない。作家も案外、というか本気でそうかもしれないと仮定しながら真面目に創作しています。それをつかまえて「歴史の解釈」にあたいしないなどと、頭ごなしに全否定することはない
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 ようするに、おたがい相手に仮想敵を見ていたのではないかと。春野さんは文面からしてあきらかに僕の論説に過剰反応しているというか、どこか攻撃的というか、一貫して否定的な印象ですし、僕は春野さんにどうにか自分の考えをわかってもらおうと必死です。これでは、いつまで経っても話が噛みあうわけがない。  でもそれも、ある意味しかたないかなともおもいます。というのは、春野さんと僕のおのおのの「妄想」と「歴史の解釈」にかんする認識や評価は結局、それぞれ根本的なところで一致しない可能性が高いようにおもわれるからです。  なぜかというとですね、僕はけっこう「妄想」に寛容なんです。どんなつまらないくだらないも
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 あらためて自分なりにまとめるとこうです。  春野さんも僕も、創作された作品に対しても歴史という学問に対しても、それぞれジャンルやレヴェルが異なるというだけで優劣はつけていない。しかし春野さんは調べることの重要性をとくに訴え、僕は考えることのほうをより重要視しています。春野さんは、ろくすっぽみずから調べもしないで「解釈」とはとうてい呼べないような「妄想」をひたすら垂れ流す人間に心底うんざりして。他方で僕は、そうした「妄想」が頻出することじたいは自然発生的な現象だからかまわないとして、問題はむしろ「解釈」をほとんどおこなわずに「解答」へ一目散に飛びつきやすくなっている現状にあり、「情報=解答
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この前の小池さんの返信で、私は二人共言い方が違うだけで、同じような地点には着地してると勝手に思ってますし、これに関してはそれで良いと思います(⁠.⁠ ⁠❛⁠ ⁠ᴗ⁠ ⁠❛⁠.⁠) 今回のまとめを読ませて頂いて、アレ?また元に戻ってない?と(⁠•⁠‿⁠•⁠)は思いましたが 私は表面上の線引を言ってるだけで…… 多分突き詰めて語れば小池さんとそんなに意見は違わないと思ってます 私の言葉が足りないんでしょうね まあ、私もやおいはスルーしてますが、いいか悪いかでいうと……どうなんでしょうね 本来なら作者に断り入れて了解の上での二次創作ならオッケーじゃないかと思いますけど、アマながらそれでお金儲
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