乃上さり

猿まね家族が本物を凌駕するとき
初の連載作品完結おめでとうございます。 秋月晶さんは硬軟併せ持つ書き手で、その振れ幅は大きく、くすっと笑えるコメディ調の作品も楽しいのですが、今作はかちかちの硬派、重厚な作品に圧倒されました。 二人の幼子を拐い監禁する雛子。最初はサイコパスかと思うくらい恐ろしく、その言動にまったく共感できませんでした。 しかし、二人の子供が不幸な家庭で育ったこと、それを見逃せずに彼らを拐ったことがわかり、また雛子の一貫した子供達への接し方を見るにつれ、何が善で何が悪なのか、見えてくるものだけで判断してはいけないと思う気持ちが強くなりました。そして気付けば、この生活が少しでも長く続くことを祈っている自分がいました。 ところがある出来事がきっかけで、この生活は終わりを迎えます。そしてそこで雛子は潔いともいえる決断をします。 最後まで彼女なりの倫理観を通したその選択に、あれだけ最初は彼女のことを理解できなかったはずなのに、さもありなんと肯いている自分がいました。 雛子の死で一旦解消された疑似家族ですが、その遺志はしっかり二人の子供に受け継がれ、二人が十年後に再会するシーンで物語は終わります。 二人が再会に選んだ場所は、日本で二番目に高い塔である東京タワー。東京タワーは最初にも登場しますが、建設当時はエッフェル搭の猿まねと揶揄されたとか。しかし、猿まねでも一流のものであれば本物を凌駕するように、雛子と茉也、茉優の猿まね家族は本物の家族関係を凌駕し、これからは幼い夫婦がそれを受け継いでいくのだと思いました。 素晴らしい作品をありがとうございました。
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さりさん、ステキなレビューありがとう💕 私の評価、嬉しい。 振れ幅は常に意識してるので、できる限り幅を狭めずがんばるね。 序盤の雛子には、共感できなくて当然で、むしろ最初に強烈な嫌悪感を置くコトで、疑似家族の形成を本物に近づけようとする意図があったの。 雛子の罪は消えようもないもので、懲役刑は免れないけど、それを減刑しうる子どもたちの思いが描きたかった。 作品自体、倫理観と個々の共感や反発が混ざり合う作りなので、許せなくても仕方ないし、でも一理あるよねと思ってもらえるようでもある。 そのリアルが立体化していたら、私の書きたかったものが書けたというコトで、読み手の方々にそれぞれ感じてもらえたら
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晶さん、お返事ありがとう✨ すべが計算され(“計算”という言い方が悪いなら)、晶さんの脳内でしっかり設計図を作った上で描かれた、血肉の通った作品なんだなと改めて思いました。 晶さんからの家族や親子の愛について問題提起を受けたようで、改めてこの作品を読み直してみたいです。 体調が悪い中、大作を仕上げて大変だったでしょう。 無理せず休んでくださいね。 改めて、素晴らしい作品をありがとうございました!
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