「マジ万字企画 【 第二回 BL 】編 書評③」

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「マジ万字企画 【 第二回 BL 】編 書評③」

 在宅が解除されてしまい、八時台にUPできなくなってしまいました……。ほんと通勤時間って無駄しかないですね。(愚痴を言っても仕方が無いですが 笑) 【④】『O'nce in a Blue Moon』このうちhttps://estar.jp/novels/25205274/viewer?page=18   著:紅屋 楓 様  https://estar.jp/novels/25205274  さて、説明不要、第一回の「BL」編の一番初めに投稿して頂き、その後全ての回でフル参加。この実績をNBAで例えるのならば「レブロン・ジェームス」でしょうか。バスケ界の「キング」ことレブロンの最も素晴らしい点は、「怪我をしない」にあります。史上最高の才能(身体能力)を持ちながら、怪我もしない。よって、ここ八年、ずーっとレブロンがNBAファイナルの決勝に出続けているのです。(野球の日本シーズみたいなものの世界版で、8年フル出場ですよ!)  そして今年は優勝! レイカーズおめでとう!  余談はさておき、紅屋さんはホント「怪我しない」ですね。基礎能力が高いので、どんな作品でも相応の水準で纏められる点が、最も評価できます。  毎回上げてばかりですが、今回は少々危うかったかもしれません。(外伝なので仕方が無いのですが)  その前に内容。  男娼の主人公は、ある日の酒場で美しい少年ジルベールと出会う。ジルベールは主人公の部屋に住み着くのだが、いつも斜に構え、取りつく島の無い様態であった。主人公はジルベールの美しさに引かれ、自身の男娼として過ごす日々にも辟易する。主人公がある病(梅毒かな?)に罹患し、主人公とジルベールは接近するのだが……。  んと、上手く纏められませんでした。ちょっと、私の主観の入る梗概になってしまいました。  その理由ですが、「外伝」の性質が強かったからです。外伝は、あくまで外伝であり、本作の「ジルベール」も第二回「純文学編」、第三階「キャラクター編」にて既に読んでおり、今回は「キャラクター編」の外伝となっています。故に、それありきの内容になっています。  実は、これが意外でした。  外伝短編とはいえ、その話だけで(本編を読んでいなくても)成立させるのが紅屋さんの性格かな? って思っていたからです。  指摘ではないですよ。外伝としては当然なので。  外伝にも性質が幾つかあり「本編の続編」を目指すものと「別視点」を目指すものと「別物」を目指すとあります。本作は「本編の続編」に位置します。「純文学編」のジルベールは「別物」ですね。今作に収録される別の話は「別視点」ですね。  実際のストーリー上の年表でも本編の一年後という事なので「続編」なのですが、それ以上にキャラクターが本編を継承していないと成立しない、厳密には「継承していないと薄い」かな? って思います。  その理由も明白で「キャラが斜に構えているから」です。でもこれだと物語が動かないので別キャラクターに主人公を移し「主人公一人称」によって押していきます。この斜に構える理由は「本編」を読まなければ分からないので、「続編」という扱いになります。(もしくは「補完」ですね。今作は語彙としては「補完」が適切かもしれません)    ここまでが内容の説明になります。外伝特有の難しさは、やはりここです。たぶん本編を読んでいないと、クライマックスのジルベールの言葉の意味がすんなりと入ってこないはずです。  読んでいると凄く興味深い内容なのです。本編で書けなかった「ジルベールのコンプレックス」に触れている内容で、「斜に構える」と「最後の台詞」が精神の二重構造になっているので、凄く面白いのです。 ※ ここでの「コンプレックス」は、「コンプレックス複合」であり誤訳の「トラウマ」とは異なる概念です。詳細は「マジ万字【論説】」にて、いつか書きます。  かなりマニアックな読み方になるので、「これ単品だと魅力が半減するかな」と思ったのは事実です。  それでも作品水準値はありましたので、普通の読み物としても成立させられている所が、紅屋さんの実力だとも再認識させられました。  ジルベールが「この世界において」他者からはどう見えているのか? 「あの一件の後」彼の精神状態はどうだったのか? 主治医のような気持ちで読んでしまいました。  再度言いますが、これ指摘じゃないです。外伝ならば当然に起こり得る事で、同じ外伝でも「純文学編」のような独立させた作品の方が、ファンとしては面白くない場合も多々あるので。  只、私的には「純文学編」の「暗黒街の天使」    https://estar.jp/novels/25498473  こちらのインパクトが強すぎたというだけです。(一番初めに読んだ「ジルベール」だったとうのも起因します)  余談になりますが、本作に収録される作品は全て「ジルベールの補完」作品です。あらゆる角度から「ジルベール」を徹底検証してやろう! という姿勢が全開で出ていますので、ファンブックとしては凄く面白かったです。個人的には、その次のクラーレット編でのジルベールが好きです。  BL編、らしい事を書いていなかったので、それも書きます。衒った分けではないですが(投稿順ですが)、鷹取様に続いての「男娼シリーズ」です。根本は似ているのですが、表面に出てきているものが真逆です。  鷹取様作品では「好き」が直接の言葉ではあまり書かれていません。でも構造的には直球で「好き」を伝えています。  紅屋さんの本作は逆で、直接の(内心の)言葉で「好き」が出てきます。でも構造的には「好き」ではなく「憧れ」に近いものとして描かれていると感じました。  どちらの作品も「貧富」についての抑圧があるのですが、これに対応する姿勢が異なっていて、「社会階級が違うから」それを打ち破るのか? それとも別れるのか? この結末の違いが顕著に異なっていて、これこそが作家性だと顕著に分かる作風の違いでした。  表層ばかりでなく、その裏側が読めてくると一層に読書の面白みが感じられますね! 【⑤】『一夜限りの関係【R*18】-改訂版-』 著:蒼井 祐希 様  https://estar.jp/novels/25281227  常連様のパレード。蒼井様作品です。  その前に、一つ、いつもとは違う変化が見受けられます。先の鷹取様、紅屋様、どちらもいつもとは違う方向性があったのですが、蒼井様作品も同じくです。今までよりも「自分側に寄せてきた」ですね。  前回もお話ししましたが、蒼井様作品は「ゲイ」に寄っています。「BL」路線から、ぐっとこちらに近づけた作風になっていました。  初めに言いますと、「今までで一番高評価」です。  二作以上読ませて頂いている方の作品は「個人的に」一番良いと思う作品をリストに纏めているのですが、今作はそれになります。  色々書きたいので、簡単に内容を。  主人公の彗は、自分を「タチ」だと思っていた。ある日、「一夜限りの相手を募集する」という男に誘われ、嫌々ながらにホテルで一夜を過ごす。男は巧みで、思いやりがあり、彗の本心、その奥に潜む無意識までを見抜く男だった。  彗の心の中で、男への愛情が芽生えていく。  しかし、これは、一夜限りの約束であり、男と再び出会う事はなかった……。  そんな内容です。これだけ書いても伝わらないので、解説します。後、たぶん長編ですので、今回読ませてもらった箇所は「プロローグ」でしょうし、後々、この男も再登場する? はずですが、掲載中の内容から咀嚼していきます。  まず初めに思った事。 「これ、書いて大丈夫なの?」  です。  公に話す事では無いので詳細は割愛しますが、かなり生々しいです。  性描写について、大きく二分すると「リアリティ」を求めるか「ファンタジー」を求めるかの二極論です。通常の「BL」……ここで読ませてもらったBLは、基本「ファンタジー」です。(男性視点で、リアリティが無い、という意味です)  この分類は女性を対象にしようが、男性を対象にしようが同じです。むしろ女性作家から見れば「異性愛」であるBLは「ファンタジー(現実味がない)」に寄っている場合がほとんど……、というか、それしか書けないはずです。男性じゃないんだから。  でも本作、かなりリアルなんです。前作でも同じ事を書きましたが、「実際にありそうな話」なんです。  勿論、細かく言えば「そんな事にはならないよ」っていう本物の男性意見は幾らでも書けるのですが、完全に否定する分けにもいかないデリケートな内容が相当に含まれています。  あまり書き過ぎると問題が起きそうなので書けませんが、相当量の「コスト」を掛けなければ、これは書けないはずです。  以前も書きましたが、「コスト」とは支払いです。自身の人生観、調べもの量、知識、感覚、時間を、どれだけ作品に投資したか? という指標です。  もっと言ってしまえば「人が書けるものは、その人の知識からしか生まれない」という原理原則があり、これを書く為に投資したものが何か? は、容易に想像がついてしまいます。    だから、凄い!  私もBL作品を書いていますが、この辺りのデリケートゾーンを話すのは、気が滅入ります。結局、他者の「リアルお姉様」達の実話を元にデザインした話しか書けませんでした。これは私がノンケだから、という意味ではなく、自身の根幹にまで迫る物を提出できなかったからです。  正直、器の違いを感じました。  「踏み込んだ話」を書くには、それ相応の気構えが必要になります。表面的な話であれこれと工夫するのに掛かるコストは「時間」くらいでしょうが、リアリティに寄せるのならば、もっと色々な物を消費しなければチープなものになってしまいます。  この質で書けたのは、絶賛に値します。  かなり抽象的な話になってしまいましたが、あまり書き過ぎるとやはり問題が出そうなので割愛します。  さて、冒頭に戻ります。  蒼井様の本作、第一回の「BL編」からの続編になります。目に付いたのは「文章が上手くなった」ですね。前作も「ゲイ」物でしたが、要素としては「BL」です。というか、「青春小説」です。かなり粗削りだったのですが、インパクトのある台詞で印象値は物凄く高いです。  それとは真逆の、リアリティある大人の魅力があり、これもまた「成長してるなぁ」と感慨に耽ました。  素足でドタバタと騒ぐ作品ではありません。じっと読み取り、あれこれと思想するタイプの作品です。  社会的な意義も高い作品で、価値のある作品でした。 (④へ)
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