このたびは、「ポプラキミノベル小説大賞」へのご応募をありがとうございました。 　第3回の今年は、募集要項に「主人公が小学生であること」「物語の舞台が、現代の小学生の日常であること」「結末に続編の余地があること」などが加わり、児童書に触れる機会の少ない方にとっては応募のハードルが高かったのではないかと思います。 　そんななか、条件に真摯に向き合い、子どもたちのためのエンタメ作品をご執筆、ご応募くださった皆さまに感謝申し上げます。 　全体の傾向として、今回は特に、幽霊や怪異が出てくる物語が多く集まりました。それぞれに魅力がありましたが、既存の人気作品も多いジャンルなので、どうしても似た作品を思い浮かべたり、比べたりしてしまいます。既存作品との違いや、あっと驚くようなアイデアがもう少し加わった作品を読みたかったという感想が残りました。 　一次選考を通過した9作品のなかから、以下の4作品が最終選考作品として選ばれました。いずれも構成力や文章力が高く、キャラクター作りも巧みで、楽しく読ませていただきました。 　しかし、「ぜひシリーズとして売り出していきたい！」という決断をするためのもう一押しのポイントが足りず、今回は残念ながら、受賞作品はなしという結果になりました。 　ハルノネさんの『学級裁判はつくも神と』は、大人の世界の「裁判」を子どもの世界に持ってくることで、身近なクラスの問題点を、物語にしっかりと落とし込めていました。登場人物に誘われながら、次はどんな展開が待っているのだろうと、期待感を持って読めます。視点人物を変えずに固定すると、一層小学生読者の没入感を高められるかもしれません。読者を飽きさせないことや、等身大の小学生を書くことにおいて、高い筆力があると感じました。 　蜂賀 三月さんの『eスポーツ！～電子の私とリアルの私～』は、親に眉をひそめられがちなゲームを、自分を突き動かす唯一無二の競技として、勉強との両立も考えながら真剣に取り組んでいくところに、スポーツ小説ならではの爽快さを感じられてよかったです。ゲームのバトルシーンは、心情や手元の描写が巧みで、遠い画面の向こうの話に感じず、見事でした。児童文庫読者に向けて、うまくチューニングされていたので、蜂賀さんにしか書けないオリジナリティが加わると、より読み応えのある作品になりそうです。 　江乃さんの『シャッター！』は、亡きおじいちゃんが遺したカメラが、未来を写すカメラだったという設定。不思議なアイテムを軸にした物語は、王道でありながら最近の児童文庫ではあまり見かけないので、新鮮さがありました。カメラの力にプラスアルファがあると、読者世代への訴求力や、事件のバリエーションが増し、さらにシリーズの続きを読みたくなるように思います。登場人物のキャラクターづけも自然で、人物像が想像しやすく、会話を楽しんで読めました。 　赤尾ロマさんの『お祓い師くんのボディガード』は、空手の強い主人公・ひまりの明るく勇敢なキャラクターが魅力的で、女の子が男の子を守る設定も新鮮でした。一人称の文体もテンポがよかったです。神社の御曹司・タケルくんのボディガードを始めるまでの流れが特に小気味よかったので、怨霊とのバトル開始後の展開にもう一山作れると、読後の満足度が一層高まると思いました。タケルくんが、くしゃみをすると犬になってしまう仕掛けも効果的で、アクションとラブコメ、両方を楽しめる作品でした。 　クオリティを満たしたうえで、あと一歩のポイントとなるのは、「ここが今までにない」と明確にわかる要素があり、なおかつ書き手の方のオリジナリティが感じられるかどうか、ということかもしれません。難しいことではありますが、書くことが楽しいと感じられている皆さまなら、オリジナリティは、意識次第でおのずと生まれてくるように思います。 　あわせて、変化のはげしい現代に生きる読者に想像をめぐらせながら、新たなムーブメントとなるような勢いのある設定やテーマに、ぜひチャレンジしていただきたいです。 　これからも書き手の方々とともに、読者の子どもたちが夢中になって読める作品づくりに力を尽くしてまいります。引き続き、「ポプラキミノベル」をよろしくお願いいたします。 （ポプラキミノベル編集部）