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プロローグ

獣のように四つん這いになった姿勢で、腰を高く掲げ上げている。
そんな自分のあられもない姿も、今は気にならない。

岡野「あ、いい……んっ」
鷲見「そんなに締め付けるな」

背後に覆いかぶさるように慶さんが僕に体を打ちつけてきていた。
逞しい胸で乱れる鼓動が、直に背中から伝わってくる。
そのたびに、最奥部を突き上げるもの。

岡野「やぁ……大きくしない……で」
鷲見「聞けない。お前が、かわいすぎるのが悪い」

艶のある声が、耳のすぐ後ろで囁いてきた。

岡野「んふっ」

慶さんが僕の耳たぶを噛む。
でも痛みよりも、甘美な疼きが背中を突き抜ける。

岡野(……感じすぎて……もう、……)

何度極みに押し上げられたかわからない。
それなのに、もっとと自分の奥が求めているのがわかる。
どくどくと脈動する熱に、羞恥も理性も、ふり捨てるしかない。
同じようにわかっている男が、背後で獣のように僕を翻弄していったーー。

岡野「ここが、今日から僕が勤める株式会社ラクルなんだ。すごい高層ビル。しかもオフィスはここの最上階だったよね」

緊張で胸がばくばくしてくる。見あげるビルは、田舎から出てきた僕には雲にも届きそうに見えた。
首が痛くなりそうなほど反り返って見あげ、しばし動きが止まる。

岡野(こんな有名なところに就職できるなんて、思ってもみなかった……しっかり頑張らなきゃ)

いつまでも眺めているわけにもいかず、僕は覚悟を決めてエントランスへと向かったーー。

2

喜多嶋「岡野ヒロか、今日から、よろしく頼むな」

オフィスに入ると、喜多嶋社長が僕を案内してくれると言う。

岡野「よろしくお願いします」

さっと頭をさげると、視界に喜多嶋社長のストレートチップな靴先が目に入った。

岡野(社長の靴、かなり高いよね。……いかにも、仕事ができそうな感じ……さすが、株式会社ラクルのトップだ)

ラクルの社長・喜多嶋彰さんは肌触りのよさそうなダブルのスーツを、さりげなく着こなしている。
足元はブランド物の靴で、上質なフォルムが質実剛健ならしさを出していた。
男らしい首元にはぱりっとアイロンの効いたえりが覗いていて、いやみがない。

喜多嶋「うちがARなどのアプリを作る開発部門と、イベントの総合プロデュースをする部門があるのは知ってるな」
岡野「はい」

起業して、あっという間に上場した新進気鋭の広告代理店。
最近ではイベントでも、プロジェクションマッピングに力を入れていて、何度もメディアに取りあげられている会社だ。

岡野(少数精鋭と聞いていたから、まさか入れるなんて……まだ夢みたいだ……)
すぐ僕と同世代くらいの男性社員が、そばに来た。

葛原「社長、鷲見社長がお見えです」
喜多嶋「またか……アポもなしに……。あいつのことだから、雑談でもしに来たんだろう」

そう言って、喜多嶋社長は行ってしまった。

3

葛原「俺はデザイナーの葛原。お前、新人の岡野だろ?」
岡野「はい。よろしくお願いします」

ちらっと葛原さんを見る。
裾からわずかにのぞいた靴は、僕では選ばないようなハイカットの靴。

岡野(この人もスーツだ。でも、着崩しているように見えて、オシャレだよな。あのタイって、ラリネッラ?)

ラリネッラは通の間でもインパクトのある商品だって評判のブランドだ。
着こなしに感心していると、カツッと小気味いい靴音が響く。
振り返ると、一度出ていった社長が長身の男を連れて戻ってきていた。

鷲見「そう邪険にするなよ。せっかくマンハッタンから戻って直で来たのに」

バックルのあるスクエアトゥの靴を履くその男は、長身の喜多嶋社長よりもさらに背が高い。
長髪をしなやかに流して、野獣のような瞳がぎらりと強い光を宿していた。
きっちりとスーツを着てはいるが、いつそれを蹴り破って本性を現すかと思うようなワイルドさも感じる。

岡野(……この人……いかにも野心家タイプに見えるけど……どこかで見たような……)
喜多嶋「来るなら、仕事を持ってこい」
鷲見「それも、ちゃんと持ってきている」

悠然と受け答えする姿は、喜多嶋社長とだと食うか食われるかの両雄並び立つという様……。

4

葛原「あのふたりが並ぶと、壮観だよな」
岡野「あの人は?」
葛原「知らないのか?鷲見慶……。わが社にとってはライバルである、株式会社リーラルのトップだ」
岡野「え!?リーラルって、この前ラビットランドの30周年記念イベントを取り仕切った会社ですよね」

そう言えば、細身のタイがよく合うイタリアンスーツ姿を何度もテレビで見かけた気がした。

岡野(どおりで、見覚えがあるはずだ……)

噂をしているのに気づいたのか、鷲見社長がこっちを見る。

5

鷲見「ずいぶんとカワイイ子を入れたな。ああいうのが好みか?」
喜多嶋「手を出すなよ。うちの会社のだ」
鷲見「なんだ?ずいぶん警戒してるんだな」
喜多嶋「お前はバイだからな。警戒もする」
岡野「バイ……?あっ!」
(男でも女でも恋愛対象はかまわないってタイプの人か……)
(遊び人なのかな?鷲見社長ってなんだかミステリアス……)
(それにしても、みんな見るからに仕事が出来そう。スーツ姿も素敵だし……緊張するよ)

思わず赤面して視線を泳がせていると、鷲見社長と目が合った。
鷲見社長は、にやりと笑うと、すぐにそばに来て、頭のてっぺんからつま先まで僕を観察し始める。

鷲見「……お前……」

すっと鷲見社長の手が僕の胸元へと差し入れられた。

岡野(うわわわわわっ!?)

振りほどきたいけど、相手は取引先の社長だと思うと、動けない。
それに、バイと聞いた言葉が、頭をぐるぐる回る。

6

岡野(えっ!?まさか、僕を狙って?)
鷲見「うーん。1個半以上開いてるな」

どうやら、手をこぶしにしているところを見ると、身幅をチェックしているらしい……。

鷲見「それ、リクルートスーツのままだろ?しかも既製品だな。袖口が隙ありすぎで肩幅もあってない。ちゃんと採寸してもらった方がいい。仕事にも影響するぞ」
岡野「すみません。初めてで……」
鷲見「ボーナスが出たら、仕立て直した方がいい。喜多嶋、ボーナスをはずめよ」
喜多嶋「働き方しだいだ」
鷲見「ふっ。ここの給料が不満なら、いつでもうちに来いよ」
岡野(そんな答えにくいことを!!)

身を堅くしていると、すっとようやく手が離れていく。

岡野(わぁ……まだ……触られた感覚が残ってる……)

僕は胸のドキドキを鎮めようと、ゆっくり深呼吸をした。

7