新PCレイアウトにする

小説コミック投稿コミュニティ エブリスタ

  • ただ今の総作品数
    2,337,841作品

尿意で目が覚めた俺は、

とりあえずトイレに向かうと、

ぼんやりとした頭で考えた。







昨日は何してたんだっけ・・・と。







そうして、

そうだ、

地球初期の微生物を真似してプログラムを組んでいたのだった、

と思い出すのにはいささかの時間を要した。







朝は頭が働かない。



俺は朝が苦手だった。







手を洗い顔を洗ったところで、

ようやく目が覚めてきた。







そうして何となくパソコンの前に座ったところ、

パソコンは起動したままになっていた。







そうか、

昨日はイライラしていたせいか、

パソコンを終了させるのを忘れたまま寝入ってしまったんだった。







すると、

あのプログラムは昨日からずっと複製と死を繰り返していたのか。






11

延々と同じプログラムが増えては、

消え。







ご苦労なことだ、

と鼻で笑いながら画面を開いた俺は、

しかしながら驚愕した。







なんだ・・・これは。







これは・・・・・・・生命?

12

画面に存在していたプログラムは、

もう昨日のそれではなかった。







雑多。



まさに雑多なプログラムがそこには混在していた。







昨日のプログラムの面影は・・・もうどこにも残っていない。







恐らく、

どこかで偶然にも「優秀な突然変異」が発生し、

初期のプログラムとは配列の違う、

より優れたプログラムが生じたのだろう。







何億倍もの「突然変異による死滅」の中、

たった1つ、

奇跡のような突然変異が生じた。







それよって生まれた優秀なプログラムは、

既存のプログラムよりも優位に複製を行う。






13

やがて残っていくのは・・・・もちろんこの新しいプログラムの方だ。







つまりこれはどういうことかと言えば・・・淘汰だ。







最初に俺が組んだプログラムは、

淘汰されてしまったのだ。







そしてそれを淘汰したプログラムすら、

また生じた進化によって淘汰され・・・



それが延々と、

夜じゅうずっと繰り返され、

このように雑多なプログラム形態を生み出したということか。







俺の頭はすっかり覚め、

むしろ、

これ以上ないと言うほど興奮していた。

14

具体的にどのようなプログラムが生じているのか、

取り出して分析してみることにした。







すると、

ますます興味深いことが分かった。







俺が思っていた以上に、

多様な変化がそこには生じていた。







まずは、

俺がプログラムAと名づけた種。







驚いたことに、

こいつは「自己を複製するプログラムを持たない」。







これには完全に度肝を抜かれた。







自己を複製できないプログラムが、

どうして生き残ることができるのか。







その個体一代で、

その種は途絶えるはずだ。



なぜ。







しかし、

よくよく観察しているうちにその謎は解けた。







プログラムAは、

寄生型のプログラムだったのだ。






15

つまり、

「複製するためのプログラムを持たない」代わりに、

「他のプログラムに自分を複製させる」ということだ。







他のプログラムは、

自分を複製しているつもりで実はプログラムAを複製している。







これにより、

自己複製プログラムを省略しているプログラムAは、

自己の容量の軽減に成功した。







サイズが小さいため、

つまり軽いために、

プログラムAは早く動作できる。







他のプログラムより断然優れていたのだ。







しかし問題点は、

他のプログラムがなければ自分を複製してもらえないということである。







プログラムAが増えすぎると、

つまり他のプログラムが減りすぎると、

プログラムAは自己を残すことが出来なくなる。






16

よってプログラムAの数は減っていき、

バランスが保たれる。







これはまさに、

自然界における草食動物と肉食動物の関係に等しいものだった。







実際、

数をプロットしてみたところ、

周期関数のような形が描き出された。

17

さらに他に、

プログラムAに寄生するプログラムまであった。







俺はこいつをプログラムBと名づけた。







プログラムBは、

プログラムAに自分を複製させる。







つまり、

プログラムAは他のプログラムに自分を複製させているつもりだが、

プログラムBの介入によってプログラムBを複製してしまっているのだ。







寄生型に寄生するプログラム。







もはや何でもありだと思った。







他にもあった。



プログラムCと名づけたプログラムは、

平和的な進化を遂げていた。







こいつらは、

複数体が集まることにより、

それぞれのプログラムを共有し合っていた。






18

お互いのプログラムを利用し合うことにより、

お互いの増殖行為を助け合う。







複数体で一種のプログラムのような振る舞いを見せていたのだ。







だが当然こいつらに寄生するプログラム、

プログラムDも・・・思った通りいたわけで、

こいつはプログラムCたちを騙して自分を複製させていた。







多種多様なプログラムによる騙し合い、

進化。







このファイル内は1つの仮想世界となり、

こいつらはその世界の中で生存競争を繰り広げていた。







これを・・・これを生命と呼ばずして、

何と呼ぶのだろうか。







俺は、

吐き気に近い歓喜を覚えた。

19

パソコンの脳である中央処理装置、

即ちCPU(Central Processing Unit)。







そのCPUの活動により、

こいつらは生きている。







CPUの活動が遅ければ、

こいつらの活動も遅くなる。







CPUとは、

即ちこいつらにとっての「時間」。







つまり、

CPUの性能を上げてやればこいつらはもっと早いスピードで進化するはずだ。







俺は、

この「自己複製プログラム」以外のソフトをすべて終了させ、

出来る限りのCPU占有を許した。







もっと見たい。



もっと進化したらどうなるのか、

その過程が見たい。







俺は知ることを強く欲し、

パソコンはこいつらの進化のためだけに存在する箱となった。






20