不在の存在とでもいうべき死者と向きあい、生者であるわれわれは何ができるのか、いったい何をすべきなのか──その問いに真正面から答えようとしている作品、瑠璃川琥珀さんの『名探偵は記憶のなか』シリーズはそのようなひとつだと僕は感じます。
https://estar.jp/novels/25902554
本格的に論じるのはまたの機会に譲るにしても、不在の存在として被害者と等価であるという、稀有な特徴をもつ探偵役キャラクターが謎を解くというのは、これまでに類を見ないタイプで非常に意義深く画期的。これほど死者の無念を晴らし、事件を解決するのにふさわしい人物の特性もないでしょう。本格ミステリー/推理小説としても当然、すぐれてクラシカルでありながら革新的でもありますし、さらなる新しい展開が待たれるところです。
ほんとうに私事ですが、喪に服すことになりました。ようやくひとまず一段落はしたものの、まだまだやらなければならない事後処理が多くいろいろと大変です。五年ほど前の父親のときは自分のすべきことは半分ほどで済んだのでそれほど実感は正直なかったのですが、今回はなかなかにしんどい想いをしています。精神的にというよりも物理的に、法的な事柄のあれこれやさまざまな意味での体力の面などなどで。
しかし、人ひとりの死がこんなにも散文的な事務的手続きばかりとは。半ばわかってもいた、事前に覚悟もしていたとはいえ、いざその事態になってみるとこれが想定以上でした。葬儀関連を除くと、悼み感傷的になる暇もほとんどない。新型コロナの社会的影響もあったり、けっこう面倒なこと問題ごとが山積みです。やらなきゃしょうがないので、それこそしょうがないと割りきって粛々と進めるのみですが、自分のやりたいこともこれ以上むだに中断したくないし、最悪また以前のように長期休止状態とかなりかねないので、そろそろできるだけ再開します。
本来の一気呵成、短期集中型に戻ってとりあえず一作だけでも先に仕上げるかもしれませんし、やはり二三作同時進行で更新するかもですね。もともと連載中の二作はそれぞれ佳境に入ってきていて煮詰まっていたというか、いったんじっくり煮詰める段階ではあったので。依然として予定は未定にしても、変わらず挑戦はやめません。The Show Must Go On──Queenの名曲のとおり「ショーはつづく」です。
小池正浩